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客観的に見るとかなりうさんくさい:ニュースがまちがった日―高校生が追った松本サリン事件報道、そして十年 [社会]


ニュースがまちがった日―高校生が追った松本サリン事件報道、そして十年

ニュースがまちがった日―高校生が追った松本サリン事件報道、そして十年

  • 作者: 林 直哉
  • 出版社/メーカー: 太郎次郎社エディタス
  • 発売日: 2004/07
  • メディア: 単行本



松本サリン事件の本第2弾。
こちらはニュースが間違ったことを題材に、高校生がメディア・リテラシを学ぶ過程が描かれる。
感想の詳細は以下に書くが、正直言って、この先生の指導は間違っているように見えて仕方がない。

【目次】
プロローグ 松本サリン事件発生
第1章 もうひとつの学校―放送部、ニュースを追う(朝から晩まで協働クラブ部活は仕事場 ほか)
第2章 ニュースの裏側―現場記者を取材する(現場でなにが起こっていたか 「テレビは何を伝えたか」音声作品づくり ほか)
第3章 メディアの特性を知る―ビデオ証言集づくり(報道部長に聞く メイキング・ザ・ビデオ証言集 ほか)
第4章 メディア・リテラシーの旅―批判を越えて(消えない壁 授業もメディアだ ほか)
エピローグ 十年めの放送部・保護者同窓会


本書は、松本美須々ヶ丘高校の放送部が松本サリン事件の誤報をドキュメンタリーで追いかけ、NHKの全国高校放送コンテスト他のコンクールに応募する過程を書籍化したものである。
最終的にはメディア・リテラシについて高校生に考えさせるところまでを描いている。

本書を読んで、私が第一に感じたのは、ここで描かれる放送部は教育上あまりよくないのでは?ということだ。
詳細は本書を読んでもらえればわかるが、本書で描かれている松本美須々ヶ丘高校の放送部は1年生で入部してから、3年生の夏過ぎで引退するまで、毎日10以降まで残って取材、編集と言った作業を実施する。そして、引退後は放送部の実績をひっさげてOA入試等で大学に入学する。

放送部顧問であり、筆者の林直哉氏は、部活で生徒と一緒に作業をすることにより、学校の勉強よりも学びになることは多いと主張するが、高校時代に勉強をおろそかにして部活にのめり込むのはいいことなのだろうか?作中には、部活のために試験前の学校を顧問は有給休暇、部員は欠席で取材に行くシーンが描かれているが、高校時代の勉強を軽視する反知性主義に毒されているように見えてならない。

作品作りについても、林氏の問題意識が強く繁栄してるように見えることもあり、顧問としての自己満足のために生徒の未来を犠牲にして、作品作りに没頭しているように見えてならない。
やっているときはどんなに厳しい部活でも楽しいとは思うが、将来を考えた指導をするのが顧問の仕事ではないだろうか?

エピローグでは、放送部で学んだ人が制作会社に入ってADを満足してやっているシーンも描かれるが、高校時代にはしっかり学習して、制作会社に発注を出すTV局の側の人間になるように指導するのが生徒の将来を見据えた教師だと思うのだが……。

このように、内容はともかく、筆者の部活に対する態度には全く共感できなかったので、読んでいて正直不快な面があった。


内容についても、メディア・リテラシを扱っているが、TVにフォーカスしたメディア・リテラシであり、インターネット時代の今では必要とされるメディア・リテラシはもっと範囲が広がっており、若干古い本であることが意識される。

私は筆者と部活動の関わりで否定的なイメージを持ってしまったが、高校生は勉強なんかよりも部活でしっかりがんばる方がいいと考える人なら、強豪放送部の活動としても楽しめるだろうし、悪くないのではないのではないかと思う。

☆☆(☆二つ)

他のBlogの反応はこちら等。
(ポジティブな評価のエントリ)
http://blog.livedoor.jp/hendrix69/archives/29075991.html
http://turtle2005.blog.so-net.ne.jp/2008-01-22-3
(ニュートラルな評価のエントリ)
http://blog.livedoor.jp/seitaisikoyuri/archives/50518111.html

意外と評価しているエントリが多い。
私のように、筆者と放送部のあり方は健全ではないと思うエントリは無かった。私の感覚が変わっているのであろうか……。
タグ:☆☆ 林直哉
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コメント 2

たーとる

人によって内容に対する意見が分かれることは全然おかしくはありませんよ。

みんなが同じ感想を持って同じ方向で話してしまうのなら、この本で問題にしていたメディアの状況になってしまうのですから。

私は生徒たちの行動力というか、そういうところを評価しました。
著者の先生はそれを書きとめている第3者という認識です。

今回ここの書評で先生の立場としてどうか、というのを見て「なるほどな~」と思う部分もありました。

評価なんて相対的なものです。人それぞれの視点があってよいのではないでしょうか。この本の内容自体がそうであるべきだと示しているようにも思います。
by たーとる (2008-10-31 22:00) 

book-sk

>たーとるさん
コメントありがとうございます。

確かに、本書で書かれている生徒の行動力はすばらしいですよね。私が高校生の時に、同じことができるかというと、とても無理だったと思います。

違う見方があっていい。どれもそれなりの真実をついているというのは、この本で言いたかったことの一つなのかもしれませんね。
by book-sk (2008-11-01 07:27) 

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