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住宅問題に対する左派的回答:住宅喪失 [社会]


住宅喪失 (ちくま新書)

住宅喪失 (ちくま新書)

  • 作者: 島本 慈子
  • 出版社/メーカー: 筑摩書房
  • 発売日: 2005/01
  • メディア: 新書



住宅問題、特にマンションにおける区分所有権の問題を鋭くえぐった本書。
問題の指摘自体は的確であるが、その問題に対する回答は左派的、社会主義的な視点から描かれている。
個人的には、回答は現実に即していないと思うが、問題の所在は読む価値があると思う。

【目次】
第1章 「人が住まいを失うとき」
第2章 地すべりを起こす雇用
第3章 住宅ローンの新たな戦略
第4章 マンションを追われて
第5章 日本の住まいはどこへ行く
第6章 迫り来る列島大地震
補章 住宅に関する政党アンケート


本書は、「住宅喪失」というタイトルの通り、主に震災・老朽化によって、補修・立て替えが必要になったときに、5分の4の決議でマンションのあり方を決めることができるという問題に対して、反対の意見を述べているのが主な項目であり、それを補う論点として収入減少等で住宅を維持できなくなると言う問題を取り扱っている。

本書によって描かれている問題は適切に把握されていると思う。
特に、震災等でダメージを負ったマンションが全会一致原則によると、どうにも処分できなくなるという、区分所有権特有の問題について実際に起こった阪神大震災の問題と併せてわかりやすく記載している。
ただし、筆者はその問題に対して政府が5分の4の同意で建て替え又は補修の選択を可能としたことに触れて、多数派の横暴によって立て替えを望まない少数派を追い出すことができるようになる、と左派丸出しの意見を述べている。

私はこの点については反対で、一人でも反対すれば立て替えができなくなると、一人変人がいただけで、マンションの価値を守ることができなくなる。価値を最大化するためには、多数決によって立て替え・補修の選択を認めるべきである。
個々のケースでは、多数派の横暴が起こってもおかしくないが、全体としてみると多数決によって不動産資産の価値を高めるようにできる様にしたこの法律は立派だと思う。

さらに、筆者は、非正規雇用が拡大するに伴って不動産ローンが組めない・払えない人が増えてきているので、そうした人でもローンを組んで住宅をもてるようにするよう主張する。

この点については、私は今までも書いてきたように、家をローンで買うのは経済合理性のない行動だと思っているので賛同はできないが、雇用の安定性が失われてきている現代でローンを組むことは脆弱性をはらんでいるという問題自体は的確に把握されていると思う。

全体的に、国の力で庶民・弱者を救済すべしと言う左翼的思想から書かれており、解決点には賛成できないが、問題の把握自体は悪くない本である。
さらに、リバースモーゲージの問題にも触れている「補章 住宅に関する政党アンケート」は一見の価値がある。

☆☆☆(☆三つ)

参考
同じ問題についても、こちらのお二方の方が私の意見にピッタリ来る。雇用流動化でローンを組んでも無事払い終わる保証がないなら、無理してローンを組まない方が賢い行動だと思う。
勝間和代氏の新書「お金は銀行に預けるな」:比較的まっとうな意見がわかりやすく読めます。
http://book-sk.blog.so-net.ne.jp/2008-01-07
橘玲氏の最新作「黄金の扉を開ける賢者の海外投資術」:住宅ローンには払えなくなるリスクだけでなく、値下がりリスクも強く存在します。
http://book-sk.blog.so-net.ne.jp/2008-04-04

他のBlogの反応はこちら等。
(ニュートラルな評価のエントリ)
http://to4cho3.exblog.jp/9541017/
(好意的な評価のエントリ)
http://reikoyamamoto.blogzine.jp/ynot/2005/02/post_1.html
http://unimaru233.cocolog-nifty.com/kumo/2005/11/post_5f07.html

私には共産主義・社会主義的な主張に見え、時代遅れに見えたのですが、ネットでのエントリを見ると悪くないようです。確かに問題意識はしっかりしていますし、読みやすいいい本だとは思います。







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リバースモーゲージ

リバースモーゲージは、今後、普及していくのではないかと思っています。
by リバースモーゲージ (2008-11-07 23:06) 

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