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実名がいっぱい:日本は財政危機ではない! [経済]


日本は財政危機ではない!

日本は財政危機ではない!

  • 作者: 高橋 洋一
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2008/10
  • メディア: 単行本



霞ヶ関埋蔵金で有名になった筆者が日本の財政危機対応をはじめとする、自己の主張する政策について書いた本。
本書は政治家・官僚の多くが実名で登場することに特徴がある。

【目次】
序章 「日本は財政危機」の嘘
第1章 財務省「増税キャンペーン」の陰謀
第2章 埋蔵金を巡る政官の攻防
第3章 埋蔵金の全貌
第4章 増税の前に行うべき税制改革
第5章 日本が甦る金融政策
第6章 官僚帝国の逆襲
第7章 官僚内閣制の脅威
終章 道州制で変わる日本の財政


タイトルからは財政危機についてのみ書いているように見えるのだが、目次を見てもらったら分かるように、財政・金融政策・官僚制・地方分権について書かれている。

財政については、筆者の主張をシンプルにまとめると、日本の政府は借金も多いが、保有する資産もリッチなので決して危機的な財政赤字ではないと言うもの。
所謂埋蔵金等の資産が多いにもかかわらず、借金の額だけをピックアップして財政危機を煽るのは、増税を目指す財政タカ派のプロパガンダであると喝破する。
余談になるが、埋蔵金は今ではすでに明らかにされているので、埋蔵ですらなく、露天掘りが可能な財産であるとのこと。

金融政策については、不況対策に有効なのは財政政策ではなく、金融政策であると主張し、現在のデフレから来る不況の責任の多くは日銀の無策にあると主張する。
日銀の過度にインフレを恐れる意味不明の体質のせいで、日本の経済成長が妨げられている。このことはネットでは多く語られているが、日本の新聞で語られることはあまり存在しない。

官僚制については、霞ヶ関官僚が天下り・利権にこだわって、政治家を操り、国益よりも自らの既得権を守るのに汲々としている様子を語っている。御用学者の作り方、使い方を書いた部分は非常におもしろい。
ただ、この部分については、私の偏見かもしれないが、若干自分が過去に在籍した組織への恨みが過度に出ていてやや感情的であるように見えてしまう。主張自体は非常に正論なのだが……。

最後に、地方分権については、地方でできることは地方で実施することを原則にし、都道府県では狭すぎるので道州制を導入することを主張している。

基本的には、筆者の主張はぶれておらず、「霞が関埋蔵金男が明かす「お国の経済」」と同じ内容がより詳細に語られている。

参考:「霞が関埋蔵金男が明かす「お国の経済」」のエントリはこちら
http://book-sk.blog.so-net.ne.jp/2008-09-27


私は、地方分権を除いては筆者の主張に賛成できる。
私の知識では金融緩和によって経済成長を達成できるかどうかは分からないが、失われた10年に人生を影響された氷河期世代の端くれとしては、ダメ元でやってみるだけの価値はあるように思える。

ちなみに、私が地方分権に反対なのは、地方官僚が信用できないから。
筆者は霞ヶ関官僚は天下り・利権を手放さず、国益よりも省益に邁進していると書きながら、地方分権を行うに当たって問題となる地方官僚の腐敗については全く触れていない。

個人的な感覚だと、霞ヶ関官僚は問題あるにしても、地方官僚よりは質が高いし、政治家も国政の政治家には本当に駄目な人は少ない。
国会議員でたたかれている人は多いが、地方議会(特に市町村)だと本当にどうしようもなく程度の低い議員がいる。このあたりは田舎の出身者でないと実感できないと思う。筆者の高橋洋一は東京都の出身らしいので、地方自治の現場を高く評価しすぎているのではないかと思ってしまう。

全体的におもしろく、読んで損はない本なのだが、「霞が関埋蔵金男が明かす「お国の経済」」を読んだ人だと、官僚・政治家の実名が出てくる他はあまり代わり映えしない様に見えてしまうかもしれない。

☆☆☆★(☆三つ半)

官僚・政治家だけでなく、御用学者の名前も挙げられていたら☆一つを増やして評価したかったのだが(笑)

他のBlogの反応はこちら等。
(筆者の主張に全面的に賛成しているエントリ)
http://kame2house.blog96.fc2.com/blog-entry-1464.html
http://wanderer.exblog.jp/7704230/
http://kuramae-japan.cocolog-nifty.com/blog/2008/11/post-c3d4.html
http://jinkichi.cocolog-nifty.com/bonjin/2008/11/post-6352.html
http://sustainability.cocolog-nifty.com/blog/2008/11/post-cf9c.html
http://diary.jp.aol.com/uvsmfn2xc/1156.html
(マンネリを指摘しつつも評価しているエントリ)
http://ameblo.jp/jamsession123go/entry-10168986462.html

マンネリを主張しているBlogも結構存在しました。
内容は文句なしにおもしろいのですが、筆者の本を過去に2冊以上読んだ人は要注意です。







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コメント 4

かめ

トラックバックありがとうございます。
トラックバックの仕組みややり方がわからないので
コメントしています。

こちらの詳細な記載に驚きました。
大変ためになりますね。
それに比べて私のブログの内容は・・・・・・
貧弱すぎて話しになりません。

今後もよろしくお願いします。
by かめ (2008-12-05 06:54) 

book-sk

>かめさん
コメントありがとうございます。
暇なので書きまくっているだけですが、よかったらこれからも覗いてみてください。
by book-sk (2008-12-05 22:19) 

イサム

はじめまして!
高橋氏の事件の情報を探しているうちにたどり着きました。
地方公務員のモラルの低さは、ご指摘の通りだと思います。
高橋氏の道州制の主張は具体性を欠いていて、現実味を感じませんが、
地方分権の拡充という方向性は正しい気がしています。
ただ、よほどしっかりしたビジョンを持った政治家が現れない限りはダメでしょうね。

by イサム (2009-04-02 23:54) 

book-sk

>イサムさん
コメントありがとうございます。

高橋洋一の論調は基本的には良い線行っていると思います。
今回の事件は残念ですが、それによって、彼の言論の価値が下がることもないと思っています。

地方分権は一つの方法でしょう。やり方については、私はイマイチ賛成できませんが、今後の日本を考えるとそれしかないのかな?と言う気もしています。
by book-sk (2009-04-04 13:34) 

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