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ケインズは死なず:消費税は0%にできる―負担を減らして社会保障を充実させる経済学 [投資・マネー]


消費税は0%にできる―負担を減らして社会保障を充実させる経済学

消費税は0%にできる―負担を減らして社会保障を充実させる経済学

  • 作者: 菊池 英博
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2009/07/17
  • メディア: 単行本



私が本書を手に取った理由は2つ。
一つは、作家大石英司氏のメールマガジンで名前が挙がっていて、記憶に残っていたこと。
もう一つは、民主党も自民党も賛成して消費税増税が不可避になってきたご時世に、このタイトルが目についたことである。

感想は以下に書くが、ちょっぴり複雑で、色々考えさせられた。

【目次】
序章 なぜ政府は消費税引き上げに狂奔するのか

第1章 国民はこんなに騙されている

1 国民を必死に騙す政府
2 最大の国民騙しは「偽装財政危機」
3 新自由主義・市場原理主義の日本侵略
――「規制緩和」「官から民へ」「小さい政府」
4 政府が必死に隠す「アメリカの対日年次要望書」

第2章 こんな愚策は絶対に許してはいけない

1 「郵政事業民営化」は富の収奪、日本は金融恐慌になり財政が破綻する
2 医療費圧縮はアメリカの要望と「構造改革」のツケ
3 日本はすでに「平成恐慌」

第3章 消費税は引き下げられる

1 財源はいくらでもある
2 なぜ財政危機という錯覚が継続するのか
3 日本の消費税は低すぎるという嘘

第4章 「財政の罠」に陥る三つのドグマ
――「小さい政府」「均衡財政」「消費税病」

1 「小さい政府」の錯覚
2 「均衡財政」の誤解
3 自覚なき「消費税病」
4 財政の使命を取り戻そう

第5章 「社会的共通資本」の拡充が国を救う

1 経済政策は歴史に学べ
2 財政政策の明暗――父ブッシュとクリントン
3 いま日本で実行すべきは「クリントン・モデル」
4 「停滞・減収・増税」の構造改革モデル
5 日本復活五カ年計画
6 医療システム再構築が経済再生のベース


●まずは本書の内容
本書の大まかな主張は以下の通り。
・消費税アップ、法人税式下げの新自由主義的思想は間違い
・歳出削減では財政再建は出来ない
・そもそも、日本には財産が多いので財政危機でもなんでもない
・財政再建に必要なのは、公共投資によるGDPの拡大
政党で言うと、国民新党が一番近そうなイメージ。

●個人的な感想
上記の意見を主張する本書だが、私は80%ぐらい受け付けない。
私はどちらかというと、池田信夫でも高橋洋一でも野口悠紀夫でもある程度は受け入れられるので、経済学者の主張に対しては間口が広い人間だと思っていたのだが、本書はしっくりこない。
その理由も自分なりに考えて一つの結論に達したのだが、これについては書評と関係なくなるので、別エントリを起こすことにする。

そんな私が唯一と言ってもいいほど賛成したい筆者の主張は「デフレ下で消費増税をすると消費意欲減退による経済縮小のスパイラルに陥る」というもの。
橋元行革を例にとって、筆者が主張するこの考えだけは大賛成。現状では消費増税はほぼ不可避だけど、このタイミングで実施するべきではないと思う。

●本書を読んで納得行かなかったところ
私が筆者の考えに賛成するのは、消費増税反対というところ。
逆に私が疑問を感じた箇所とそこへの疑問を例示する。
(◇:本書の主張、→:それに対する私の疑問)
◇フラットタックスは財政を苦しくするだけ。
→ロシアではフラットタックスで経済が上向いたという記事をちらほら見かける。財政が向上したかどうかまでは不明だが、課税所得が増えたという説もある。
参考:大前研一「ニュースの視点」Blog

◇新自由主義で雇用が破壊されている
→小泉時代は比較的雇用も好調だったような……。雇用については新自由主義(法人税減税、政府支出縮小)の効果よりも、世代間格差を助長する歪んだ制度が原因に思える。
参考:「たった1%の賃下げが99%を幸せにする

◇特別会計の財産を合算してみると、日本は財政危機ではない。主に外為特会、財投、社会保証基金などの財源は十分にある。
→外為特会、社会補償基金はさておき、感覚的には財投の資金を満額回収できるとは思えない。実際論として政府系金融機関、地方公共団体などに回された財投資金は満額回収できるのだろうか??

なお、ここは本書とは関係ないが、日本には財産があるから財政赤字はたいしたことがないと主張する人は、財産を過大に評価する傾向があると思う。筆者は値段のつく金融資産だけを対象に論じているので良心的だと思うが、論者によっては、空港や道路、ひどい人では田舎の利用価値ゼロに近い箱物まで資産に計上しているフシがある。そこまで行くと逆の意味で詐欺だろう。

●最大の疑問
私がこのエントリで書評した「新潮選書 日本はなぜ貧しい人が多いのか 「意外な事実」の経済学」では、(人口が減少していって)極論だが最後の1人の日本人が出た場合、その人は国の借金と国の資産を全て受け継ぐ。だから、国の借金が多くても資産が多い場合は心配ない。という記述があった。

本書もそれと同じ考えで、公共投資を主張する。
でも、世間一般の人が公共投資を嫌うのは、その支出で借金が増えるからではなく、投資が有効に使われないためだ。それに対して、本書では公共投資は全て有効に使われるという前提に立っている。
八ッ場ダムも静岡空港も投資した金額と最低でも同じ価値が有ると考えるのは妥当だろうか??
私はその点が納得いかない。

●最後に
このように、個人的には納得いかないことが多いのだが、それでも資料は豊富で考える材料としてはもってこい。
主張には納得いかなくとも、書籍としては非情に良質な一冊であることには間違いない。

☆☆☆★(☆三つ半)

他のBlogの反応はこちら
(本書をポジティブに評価するエントリ)
http://darsana.exblog.jp/8659565/
http://bookintro.at.webry.info/201003/article_2.html
http://bousikai.seesaa.net/article/125157794.html
右派にも左派にも支持するエントリがあって、ちょっとびっくり。
確かにどっちにも支持する人はいそう。
私は消費税アップ反対以外の点ではあまり賛同できなかったのですが……。





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