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破綻本の典型。:国債・非常事態宣言 「3年以内の暴落」へのカウントダウン [投資・マネー]


国債・非常事態宣言 「3年以内の暴落」へのカウントダウン (朝日新書)

国債・非常事態宣言 「3年以内の暴落」へのカウントダウン (朝日新書)

  • 作者: 松田千恵子
  • 出版社/メーカー: 朝日新聞出版
  • 発売日: 2011/09/13
  • メディア: 新書



ニッポン破綻論の典型的な新書。
単に不安を煽るだけではなくまじめに書かれた破綻論で、全体的な出来は非常に良い。
欠点は編集者がつけたと思しきセンセーショナルすぎて胡散臭くなっているタイトルと、
答えられていない疑問があること。


【目次】
第1章 国債と格付けの正しい関係―借金だらけの日本の国債が、なぜダブルAなのか?
 国債の何が問題なのか
 日本国債は大丈夫なのか
 債務の見方をわかっていますか
第2章 国債暴落のシナリオ―足りない資金、これから国債はどうなるのか?
 格付け会社の最近の動き
 今そこにある危機
 先送りが状況を悪化させる
第3章 国債暴落後の日本経済―やはり、ハイパーインフレがやってくるのか?
 最も悪いシナリオは何か
 本質的には何が問題なのか
 X‐Dayに向けてどう備えるか
 次世代に向けた成長のために


日本が破綻しないという理由としてよくあげられるのは、
1.徴税権があるから
2.いくらでも印刷できるから
3.日本国債は日本人がほとんどを購入しているから
4.対外資産が大きいから、貿易黒字が大きいから
5.日本人の持つ金融資産が大きいから
とったところ。

本書はそれらについて、丁寧に答えている。
徴税や紙幣印刷で国債を返すと、見た目上はデフォルトしていなくても、インフレや大増税でデフォルトに近いダメージを受けてしまう。
日本人がほとんどを購入しているというのも、増税やインフレで借金を帳消しにした際に他国と揉めなくて住むというだけだから、破綻しない論拠としては弱い。日本人が国債よりも外国債や株式を好むようになれば、金利は上昇するのだ。

5.については、筆者が言うように金融資産が大きいから徴税できるというのはあまり救いにならない。
ただ、金融資産が大きいから、うまく活用すれば国が豊かになるという意味では、十分に意味のあるファクトだけど……。

と、考えの浅いWebサイトで語られているような「日本国債は大丈夫」論を吹き飛ばす、初心者にもわかりやすいいい出来の新書に仕上がっている。
筆者が言うように、経済学的に見て、かつ、今の状態が続くのなら、日本国債は暴落せざるをえないのだ。

と、基本的にはいい本なのだが、本書は大事な疑問に答えていない。
経済学的に見ると、今の日本国債は危ない。
だが、国債の空売りに挑んだファンド・金融機関は死屍累々の有様。
それはなぜなのだろう?

この疑問に答えられるなら、間違いなく満点だった。
破綻する理由が山のようにあるのに対し、破綻しない(オカルトではない)理由もきっとあるのだろう。

☆☆☆★(☆3つ半)

他のBlogの反応はこちら。
http://blog.livedoor.jp/newcountry/archives/51797577.html
http://d.hatena.ne.jp/nakorake/20111029/1319892981
http://dokushototousi.livedoor.biz/archives/1499852.html
http://agora-web.jp/archives/1390374.html
http://www.shinoby.net/2011/10/post-2506.html#more
http://d.hatena.ne.jp/random_walk/20110929/p1

ちなみに、私の国債価値に関する今のところの考え方は「暴落するのは確実だけど、いつ暴落するかはわからない。しかも、直近という感じではなさそう」というところです。
個人的には、まだソフトランディングできるのか、それともハードランディングならできるのか?というところは非常に知りたい。
年金支給額を半分に切ってなんとかなるていどなら、さっさとそうして欲しいのですが……。





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コメント 3

とんちゃん

>日本人が国債よりも外国債や株式を好むようになれば、金利は上昇するのだ。

金利は上昇しますけれど、 それは外国債や株式から得られる利益に相当する額だけです。 既存の現金・債券の価値は下落しますが、 その分が国の収入になります。 まあ、 金持ちにかかる税金です。 だれかが円をドルに変えれば、 その円を買う人がいるので円がなくなるわけではありません。 その円は現金で持つか債権をかうより仕方がありません。 家計の場合とちがうことを理解してください。

大損をするのは現金・債権等の資産を大量に持っている人たちです。 この人たちやそれに洗脳された人たちが大騒ぎしている。 太平洋戦争の直後のハイパーインフレも母はこたえなかったといっていました。 借金しかなかったから。 ハイパーインフレが起きるとおもう人たちはどんどん金をものにかえてください。 そうすれば景気もよくなります。

逆に緊縮財政を行えば、 景気はさらに悪くなり失業者は増えデフレが進行します。 貯金・債権を持つ人たちは多少得をします。 株価はドンとさがります。

少子化が進行している限りは、その分以上に生産性を上げるとか、 輸出を増やしてその代金を将来のために国外で投資するとかができればよいのですが。 輸出を増やすことは、 輸出先の失業を増やすことになるといって非難される可能性もあります。 とにかく少子化をなんとかするか、 すくなくなっていく糧を分け合うとかするしかないでしょう。


by とんちゃん (2011-11-13 15:23) 

とんちゃん

今は、 外国債は日本の日本の国債より悪いし、 株式も先行きは不透明です。 とんちゃんは、 毎日経済ニュースを読んで個人的に株の売り買いをしています。

株ではもちろん儲けようとしていますが、 変なことに、 株でもうけるには不利になっても、 経済的に弱いものが助かるような政策を支持しています。 とんちゃんは貧乏人として育ちました。 Buffetの1/100,000でもできたらとおもっています。

独立した通貨を持つ国のマクロ経済は、 家計とは違うことを理解してください。
by とんちゃん (2011-11-13 15:41) 

とんちゃん

アマゾンのBook Review でとんちゃんと同じことをいっている人がありました。

****
日本の金融資産が日本国債を買うためにあるのではないなら、
じゃ何を買うんですか?
答えてください!
米国債ですか。いいですよ、どんどん買ってください。
そのお陰で円安になって、輸出産業大儲かりですね。
税収アップですね。
だれかが円を売ったら、だれかが円を買っているんですよ。
円を買った人が持っている円はどこに行くのでしょう~。
答えてください!
日本国債しか行き場所はありませ~ん。
****

私は、 高インフレがよいとおもっているわけではありません。 ただ、 いま緊縮財政を行えば、 その害のほうが大きいだろうとおもっているのです。 いちど、 今のような状態におちいるとそこから抜け出すにはたいへんです。 ヨーロッパも米国も日本も。

ただし、 デイトレには今のように先行不安で株価が乱高下するのがよいのです。 まあ、 寄生虫ですから。
by とんちゃん (2011-11-13 16:16) 

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