青雲はるかに [小説]
歴史小説は好きなジャンルなのですが、宮城谷昌光の作品ははじめてです。
歴史小説の面白さは、主人公となった人物の生涯の面白さと、歴史書から明らかでない部分が補われるフィクションとしての面白さがあると考えています。
この作者は古代中国の人物を主人公とした小説で有名ですが、主人公がマイナーで親しみが持ちにくい分、歴史書から明らかでない補われた部分の面白さがあふれているように見えました。
本作もハンショの生涯を史記、戦国策から再構築し、深みのある人間としての成功者を魅力的に描いています。確かに、中国古典なので、「徳」が過大評価されているように見えるなど、現代的な感覚からは受け入れにくい箇所があるのは事実です。それでも、昔の日本人の基礎教養だった漢文を下敷きにした作品なので、現代に生きる私たちとしても、このような作品に触れると忘れていたものがよみがえってくる感覚が味わえると思います。
ぜひこの作者のほかの作品も読みたくなる一品でした。
☆☆☆★(☆三つ半)
2008-01-13 08:17
nice!(1)
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