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女性の感性:俯いていたつもりは無い [小説]

俯いていたつもりはない (光文社文庫 な 26-4)

俯いていたつもりはない (光文社文庫 な 26-4)

  • 作者: 永井 するみ
  • 出版社/メーカー: 光文社
  • 発売日: 2007/08
  • メディア: 文庫

幼児教室を舞台にしたミステリ。ジャンルがミステリなのであらすじを書くのは控えるが、物語は子供、先生(+先生の母)を中心に進行する。

幼児、先生の世代(40代)、その親の世代(70代)と3世代の登場人物がうまく描かれていることに好感の持てる小説。特に、幼児の視点での記述が今まで読んだミステリの中では飛びぬけてうまく描かれており、物語にリアリティとほほえましさを添えている。

ミステリといっても、謎解きを楽しむ類の小説ではなく、登場人物の行動・心の動きを楽しむ種類の小説なので、謎はなんと言うことも無いのだが、人間描写が上手に出来ているのでとても楽しめる小説となっている。

ここまで書いたように、基本的にはすごくいい出来なのだが、この小説には難点が二つある。

ひとつは、物語の終盤で語られる犯人の動機およびその告白シーンはとってつけたようで、やや作者の若者に対する偏見が出ているようにも感じられる。余りにも短絡的なのではないだろうか。
二つ目は、最終章の存在の意義である。よくよく考えると作者は最終章の存在により、主人公のそれまでの行動を説明したかったのだと思われる。しかし、私が最初読んだ感想は最終章の存在意義が分からなかった。この最終章がのどに刺さった魚の小骨のように、読後の引っかかりとなってしまっている。
この二つ目の難点さえなければ、最高に近い小説だと思うだけに残念でならない。

このエントリのタイトルに書いたように、女性の感性では最終章は自然なのかもしれない。但し、男性の読者であれば余分だと思う人も多いのではなかろうか(永井するみの味ともいえるが・・・・)。
面白い小説であることに違いは無いので、永井するみの小説が好きな人は間違いなく買いであろう。

☆☆☆(☆三つ)


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