江戸の職業と経済と:損料屋喜八郎始末控え [小説]
山本一力二冊目。今回も江戸の暮らしはすごく良く描けており、江戸の生活が目に浮かんでくる描写はすばらしい。
しかも、本書は江戸の経済事情として、田沼時代のインフレ・バブルから松平定信の時代におけるデフレ経済の移り変わりが札差の生活を通じてうまく描かれている。江戸の暮らしと経済を描いた作品としては出色の出来である。
善意でやった棄捐令が、デフレを巻き起こしかえって生活が苦しくなる。まるでバブル後の失われた10年のようではないか。そう考えると、人間は同じことを繰り返さざるを得ないのかもしれない。
江戸時代では現代ほど民意が政治に反映しないので、現代に比べて罪が重いともいえるが…
ちなみに、私は本書を手に取った時は損料屋とは現代の保証協会のようなものだと思っていた。ところが、実際は日用品を低額で貸し出すレンタル屋とのこと。本書には損料屋、札差のほかにも江戸時代ならではの職業が出てきており、それらの商売を読むだけでも十分楽しめる一冊である。
さすがに現代のキャバクラに当たる襦袢茶屋は筆者の創作だと思うが…
☆☆☆☆(☆四つ)
きくましはくなんなん
by きくま (2008-02-04 17:33)