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経済学の正論:資本開国論 [経済]

資本開国論―新たなグローバル化時代の経済戦略

資本開国論―新たなグローバル化時代の経済戦略

  • 作者: 野口 悠紀雄
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2007/06/01
  • メディア: 単行本
野口悠紀雄氏が現在の日本経済について記述した最新の本。筆者は経済学者としてかなりまっとうで、オーソドックスな正論がこの本でも展開されている。近年まれに見る日本経済を論じた良書である。
 
目次は長いので最後に記載するが、筆者はこの本を通じて、賃金・物価が下落した理由を記し、日本が貧しくなった理由を明確に説明してくれている。
2008年になって大臣も日本はもはや経済大国ではないと発言するなど、徐々にではあるが日本の凋落が認識されるようになっている。
 
しかし、筆者がこの本を出版した昨年6月は経済回復ムードに浮かれていた頃なので、その頃に日本経済の現状を正しく理解していた筆者の慧眼はさすがである。
 
そして、筆者は外国資本を日本に入れることを拒むことなく、外圧を通じて日本の経済構造を高収益のものに変えなければならないと主張する。筆者の主張は教科書的には大正解であろうし、普通に読めば多くの人が最もだと納得するはず。
惜しむらくは、正論なだけに実行される可能性が少ないことである。本書の提言のように、外資の導入・重厚長大産業から金融・ソフトウェアへの転換、年金の公平化を実際に実施すると大混乱が起こるはず。どこかでやら無ければならないにしても、今の日本にその覚悟はあるのか。
本当は経済回復に浮かれていた昨年がラストチャンスだったのではと怖い想像もしてしまう。
 
これから団塊の世代が高齢化してくるので、大幅な改革は難しくなるだろう(団塊世代が死亡によって少数派になる頃には手遅れの可能性が高い)。緩慢な死へ向かっている日本の現状を派手ではないが、的確に指摘している良書である。
 
私は本書を読んで、日本の将来に対して不安を覚えると共に、少しでもよくなるように個人としての最大限の努力をする決意を新たにした。若い世代はぜひ、本書を読んで日本の現状を把握し、将来について考えてほしい。
 
なお、本書は経済の教科書的な書き方がされているので、苦手な人は読むのに苦労するだろう。決して難しくは無いが、教科書・数字にアレルギーのある人は要注意。
 
☆☆☆☆(☆四つ)
 
 
目次
第1章 企業栄えて家計滅ぶ──格差問題の根底にあるもの
1 減少した賃金所得
2 マイナスになった家計の純利子所得
3 対外経済構造の大きな変化
4 物価下落や賃金伸び悩みは対外関係の変化による
5 格差是正策や成長促進策では解決できない
第2章 世界の大変化に追いつけない日本──アイルランドやイギリスが日本を
抜いた理由
1 躍進する「脱工業化国」と没落する「産業大国」
2 二一世紀型グローバリゼーション(1)──オフショアリング
3 二一世紀型グローバリゼーション(2)──先進国間の直接投資
4 二一世紀型グローバリゼーションの経済効果
第3章 量の拡大でなく、質の向上を──本当に必要なイノベーションは何か
1 出生率引上げでは労働力不足や年金問題は解決できない
2 低生産性部門の再編で労働力不足に対応する
3 日本に未来型企業がない
4 コモディティ化からの脱却を目指せ
第4章 難題山積の財政改革──これまで何が行なわれたか
1 財政再建の道筋は見えない
2 重要課題は先送りされたまま
3 きわめて深刻な年金問題
4 消費税の改革
第5章 法人税減税では日本経済は活性化しない──「まやかし経済学」はやめ
にしよう
1 法人税負担は企業の国際競争力をそぐか?
2 法人税は投資に中立的
3 海外移転の原因は法人税ではない
4 法人税を減税するなら資本輸入のために
5 日本の税負担率は国際的に見て高くない
6 学ぶべきレーガン税制改革は八六年改革
第6章 資本開国こそが日本を活性化する──いま本当に必要なこと
1 金融緩和・円安政策は時代遅れ
2 資本開国による企業改革
3 本当の資産大国への道
【付論1】グローバリゼーションが賃金に与える影響
【付論2】対外投資と為替リスク
 

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