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最強の敵登場!!:水滸伝17 [小説]

水滸伝 17 (17) (集英社文庫 き 3-60)

水滸伝 17 (17) (集英社文庫 き 3-60)

  • 作者: 北方 謙三
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2008/02
  • メディア: 文庫
第16巻はこちら
 ついに最強の敵童貫元帥が本格的に戦線に出てくる第17巻。今までの前フリにたがわない存在感と実力が示されている。そして、17巻におけるもう一人の主役は楊令。宋江をしのぐ人望を発揮している。北方謙三はすでに楊令伝 1 (1) の構想を持っていたのであろう。
 
この17巻における最大のテーマは最強の敵童貫に立ち向かう梁山泊の面々の必死の苦闘。自分よりも大きな敵に死力を振り絞って立ち向かう男たちの姿が十分に描かれている。
あるものは知力で、あるものは武術で、そしてあるものは自分の命を懸けて圧倒的な敵に一丸となって立ち向かう。男の美学を描く北方謙三の本領が発揮されている。
 
そして、童貫との戦いの合間に繰り広げられるのは北方水滸伝で一番人をひきつける楊令の成長物語。父楊志の生き様を目に焼きつけ、梁山泊最強の男である林沖に稽古をつけてもらい、秦明に見守られた過去を持ち、王進の下で修行を受ける楊令。
そこに、魯達(魯智真)がやってきて、梁山泊の好漢の生き様を語り、女への理解を説く。その後、父の遺品である吹毛剣と向き合うことで一層成長している。
作者は現世代の梁山泊の交換の生き様と、次世代の若者の成長を得意の男の生き様を交えながら十分に描ききっている。

上記のような、メインとなるストーリーのほかにもサイドストーリーとして公孫勝の活躍と苦悩など一人ひとりの物語が味わい深い。
 
強いて難点を挙げるとすれば、収束に向かって好漢が多めに死ぬことだろうか。それでも一人ひとりの死はおざなりに描かれておらず、童貫の強さを引き立てているため、まったくの無駄にはなっていない。
 
☆☆☆☆(☆四つ)

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