下流に対するスカッとした説明:下流志向 [社会]
内田樹が下流になる人に対してその理由を考察したのが本書。
内田樹らしい説には説得力が十分で、下流の学習・ニートに対するすっきりとした説明がなされている。
【目次】
第1章 学びからの逃走(新たいタイプの日本人の出現 勉強を嫌悪する日本の子ども ほか)
第2章 リスク社会の弱者たち(パイプラインの亀裂 階層ごとにリスクの濃淡がある ほか)
第3章 労働からの逃走(自己決定の詐術 不条理に気づかない ほか)
第4章 質疑応答(アメリカン・モデルの終焉 子どもの成長を待てない親 ほか)
本書は講演録を元に書籍化されたものであるが、下流になる人はなぜ存在するのかと言うのが説得力を持って語られている。
本書の主張の主眼は下流になる人は、時間的視点を持たず、刹那的に判断することが問題であるとの主張である。
この主張を説得するための理由として、学習から逃げる学生はそうすることが価値あることであるかのように、進んでそうしていると言うことが例示と共に挙げられている。
このことは、非常にすっきりと感じられた。
私はこのblogを書くようになってから、amazonのレビューをたびたび見るようになったのだが、「理解できない」と言う理由だけで低い評価をつけている人は意外と多い。
理解できないのは自分が悪いのではなく、提供側が悪いのだと主張するかのような態度は不思議だったが、この本を読んで納得できるものがあった。
確かに、この本は批判されているように、事実の提示が例示レベルに偏っており、決して広く調査した結果に基づいているものではない。
しかし、「下流社会 新たな階層集団の出現」のように怪しげな数値を用いるよりはいっそいさぎがいい。
事実を数字で把握したい人は、自分で調べればいいのだから。
議論の礎には向いていないかもしれないが、納得できる説明にはなっているので、ひとつの意見としては大いにオススメできる一冊である。
☆☆☆☆(☆四つ)
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