シリーズの転換点:ηなのに夢のよう [小説]
前作:λに歯がないのレビューはこちら
http://book-sk.blog.so-net.ne.jp/2008-04-02
森博嗣のGシリーズ6作目。今までのファンにはたまらないオールスター勢ぞろいで、シリーズの転換点となるであろう作品。
前作を読んだ時は、マンネリ化だと思った。ミステリの謎解きに関わる部分は少ないし、次へと続く伏線ばっかり多いしと、どちらかと言うとネガティブな印象を受けた。
しかし、本作を呼んでみてやっぱりこれはこれで面白いと思い直した。
確かに、今回もミステリの謎解き部分は若干不思議が残る展開である。しかし、登場人物のせりふで語られているように、死ぬ人の心理など残された人が正確に推し量ることはできない。
そのことが、心に残ったがゆえにこの結末にも納得することが出来たのだ。
amazonのレビューなどでは相変わらず賛否両論。否の部分ではこれはミステリではないという意見が多い。
しかし、ミステリだからこうあるべきだと言う古い考えは読書人生を大きく損なってしまうように思える。
筆者は読者の期待を裏切る方向で進化しているので、それを大きな気持ちで楽しめばいいではないかというのが本作を読んだ感想である。
登場人物は相変わらず魅力的で、特に萌絵は本作で大きく精神的に成長しているので、ますます魅力的に描かれている。自分がその立場だったらとてもそんなに強くはあれないと思うので、その前向きになった姿勢には非常に好漢が持てた。
シリーズは途中なので、完結すると評価が変わる可能性が大きいが、それでも本作はシンプルに楽しめた。
謎を解こうと肩に力を入れて読むのではなく、キャラクターの魅力を中心にしたストーリーを軽く楽しむと良い作品。
☆☆☆★(☆三つ半)
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