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少年時代における瘴気の記憶:空白の叫び [小説]


空白の叫び 上

空白の叫び 上

  • 作者: 貫井 徳郎
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2006/08/25
  • メディア: 単行本



空白の叫び 下

空白の叫び 下

  • 作者: 貫井 徳郎
  • 出版社/メーカー: 小学館
  • 発売日: 2006/08/25
  • メディア: 単行本



ミステリ作家の貫井徳郎が少年独特の瘴気を描いた作品。貫井徳郎としては、異色作の部類に感じられる。
少年の狂気・性欲・閉塞感が描かれており、自分の少年時代を思い返してはぞっとする思いに駆られる部分がある。

主人公は三人の少年。それぞれが自分の内に溜まった衝動、瘴気に突き動かされて殺人を犯す。
上巻はその衝動になった原因と、殺人に至るまでの過程が入念に描かれる。
久藤は性衝動、暴力衝動、神原は自分のものを奪われることに対する過剰な反応、葛城は鈍い幼馴染に帰省される事への苛立ち、怒り。
微妙に三者三様で異なるようだが、少年期独特の閉塞感・性衝動が元になっていることは共通している。

本書の醍醐味は、殺人と言う特殊なテーマを描いていながら、どこか納得させられるものがあるところである。
一歩間違えればそうなっていたと言うわけではないが、「4TEEN 」よりは、身近に感じられる部分が多い。

下巻では殺人で送致された少年院で知り合った三人に向けられる悪意と、それに翻弄されて追い込まれた少年達が銀行強盗を成功させるくだりが描かれる。こちらのパートは貫井徳郎らしさが出ている感が強い。
悪意のありどころを探るミステリと、銀行強盗に向けたクライムノベル。後半部分は一気に加速して、急転直下の衝撃を味わうことが出来る。

本書の主人公は内なる瘴気・狂気を抱えるがゆえに、人とうまく距離感をつかむことが出来ない。
それがために、衝突し、運命に翻弄され、ある種悲しい結末をたどる。
人は一人では生きていけない。しかし、他人と関わることで生まれる悲劇もあるのだということをしっかりと描ききった作品である。
人と交わることで不幸になることが見えていても、人間は人とのかかわりを絶てないことがよくわかるのだ。

本書は全体として重いところもあるが、じっくり楽しむことの出来るオススメの本である。

☆☆☆☆(☆四つ)




他のブログの反応はこちら等
あっと思った意見は、女の子の内面の描写は弱いのじゃないかと言う意見。これは男の私には分からなかった意見でした。
http://gcb-go-go-koro.cocolog-nifty.com/blog/2008/05/post_13e3.html
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