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人間の毀れ方を濃厚に描く作品:グロテスク [小説]


グロテスク〈上〉 (文春文庫)

グロテスク〈上〉 (文春文庫)

  • 作者: 桐野 夏生
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2006/09
  • メディア: 文庫



グロテスク〈下〉 (文春文庫)

グロテスク〈下〉 (文春文庫)

  • 作者: 桐野 夏生
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2006/09
  • メディア: 文庫



女と言うよりも、人間のドロドロを濃厚に描ききった作品。
人間の悪意、世間と言う集団の悪意がきっちり現れているので、その毒が味わい深い。

本書を最初に読んで思ったのは、学校における格差・悪意と言う同じテーマを選びながら貫井徳郎の「愚行録」と全然違った味になっていると言う驚き。

出版された順番では本書のほうが先だが、私が読んだのは「愚行録」が先だったので比較しながら本書読まずにはいられなかった。

ミステリ風味の際立った貫井徳郎とは異なり、桐野夏生はその持ち味を生かしたドロドロ加減と、ある種すっきりしない後にこってりと残る濃厚な作品になっている。
人の悪意、世間の悪意と言う毒の要素を楽しみたい人なら桐野夏生の本書がオススメである。
逆に、人を選ぶのも確かで、宮部みゆき・東野圭吾が誰にも受け入れられるアラビカコーヒーだとしたら、桐野夏生は独特の持ち味で人をひきつけるロブスタコーヒーみたいな味わいがある。

「情」のミステリ桐野夏生をじっくり楽しめる作品ではあるが、男の私からすると女の醜い部分が濃厚に描かれているので毒気に当てられた読後感が残った。

人を選ぶのは確かだが、好きな人にはど真ん中に来ると思われると思われるので、まだの人は一度挑戦してもらいたい。

☆☆☆★(☆三つ半)

併せて読みたいのはこちら。
「名門校での悪意に翻弄された人生」という同じ部分に題材をとりながら、全然違う仕上がりになっている。
毒気が少ないほうが好みならこちらも試してほしい。

愚行録

愚行録

  • 作者: 貫井 徳郎
  • 出版社/メーカー: 東京創元社
  • 発売日: 2006/03/22
  • メディア: 単行本






他のブログの反応はこちら等。
反応は意外と良いようです。桐野夏生の作品は当たりはずれがあると言う意見もあって、それが私の感覚にはマッチしました。私も「柔らかな頬」はダメだったのです……
http://blog.goo.ne.jp/orionisorionis/e/82f538acf984ea88cb43ef8ba41bf10f
http://lalala28.jugem.jp/?eid=370
http://ryu71.blog23.fc2.com/blog-entry-646.html
http://pub.ne.jp/hino6r/?entry_id=1383636
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コメント 4

うっしい

おっとぉ!来ましたね。桐野夏生ですか。この人の小説はホント偽悪趣味というかグロテスクで暗いですよね。
by うっしい (2008-05-27 16:16) 

book-sk

>うっしいさん
コメントありがとうございます。
桐野夏生の小説は確かにダークですよね。
新堂冬樹とか馳星周のようにバイオレンスなのは大丈夫なんですが、桐野夏生はちょっと毒気に当てられます。
男女の違いなのかな。
by book-sk (2008-05-27 21:06) 

tanishi

二度目のコメントです、コンニチハ♪

以前この本を読んだ時「男性はどう読むのだろう~」と思ったのですが、
この記事でその疑問がチラリとほどけて嬉しい(?)ですv
やっぱり毒気に当てられますよね~~w
by tanishi (2008-05-29 23:11) 

book-sk

>tanishiさん
コメントありがとうございます。
この本は男女の違いを感じましたね。毒気に当てられましたw

by book-sk (2008-05-29 23:50) 

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