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貴志祐介の本格ミステリ:硝子のハンマー [小説]


硝子のハンマー (角川文庫 き 28-2)

硝子のハンマー (角川文庫 き 28-2)

  • 作者: 貴志 祐介
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2007/10
  • メディア: 文庫



黒い家」のようなホラーで有名な貴志祐介が描く本格ミステリ。
いかにもな謎解きを楽しめる。

本書は大きく2部からなる構成となっており、第一部は言うなれば「探偵編」。殺人事件が起こってから、探偵役の主人公がいろいろな可能性をつぶして、「謎を解いた」と宣言する部分までが描かれる。
他方、第二部は「犯人編」犯人の生い立ちから始まって、動機、トリックまでを描いた、言うならば回答編である。

第一部では、さまざまな可能性が検討され、そして、つぶされていく。この過程を見ていると、探偵と言うよりも、ネタを考えては没にされる推理小説作家にでもなった気分が味わえる。
私はパズル物の推理小説は余り好みではないが、そういうのが好きな人は十分に考える過程を楽しめるであろう。

第二部では逆に、いまどきの推理小説のように、トリック等が無くても十分に楽しめるように、犯人の人間描写にスポットを当てた描き方をされる。若干突っ込みどころはあるものの、ふとした理由で硝子を一枚隔てた別世界の住人になってしまう怖さと共に、追い詰められた人間の焦りとも狂気ともつかない感情がしっかりと描かれているので、十分に楽しめる。

本書は二部構成にすることで、古くからの本格ミステリファンも、最近のミステリを通じた人間描写のファンも取り込もうと言う、ある種欲張りな構成になっている。
加えて言うなら、森博嗣や京極夏彦に代表されるように、「犯人の動機なんかはわかりっこない」とする立場もあるが、本書は二部構成にしたことで自然に動機を示すことができると言うメリットも発生している。

本書は余り大きな話題になった作品ではないかもしれないが、謎解き・人間描写・主人公のハードボイルド的冒険とさまざまな要素が無理なく詰め込まれた、ミステリの十得ナイフのような作品である。
読み手のどこかしらにはヒットするであろう作品なので、意外とお得度は高いと思われる。

☆☆☆(☆三つ)

本書で描かれている、パラジウムの仕手戦の描写は実話。東京商品取引所の大失態である。
マネー書のジャンルでは有名(私もゴミ投資家シリーズで知った)でも、小説好きにはマイナーなようで、さすがに他のblogのエントリでこれに触れている人はほとんど居ませんでした。




他のブログの反応はこちら等。
大絶賛とまではいかないが、好意的なエントリが、数多く上げられています。
ミステリ好きなら外れは引かないと思いますよ。
http://ameblo.jp/beseen/entry-10104979285.html
http://blog.goo.ne.jp/qwer0987/e/a1ee8206dd5dd2537d472f3caaca695f
http://nanamemo.jugem.jp/?eid=1224
http://d.hatena.ne.jp/legnum/20080518/1211073913
http://d.hatena.ne.jp/legnum/20080518/1211073913
http://tsukiniusagi.jugem.jp/?eid=849


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コメント 2

ちきちき

TBありがとうございました。

>ネタを考えては没にされる推理小説作家にでもなった気分が

に大うけしてしまいました。
いろんな要素てんこ盛りで楽しく読めました。
by ちきちき (2008-07-04 20:50) 

book-sk

>ちきちきさん
コメントありがとうございます。
結構他にないタイプの小説ですよね。
本当にいろんな要素てんこ盛りです。
by book-sk (2008-07-04 22:15) 

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