今読むと、怖くない。しかし、面白さは十分:桃色浄土 [小説]
1994年初版の本書。
ホラーを得意とする坂東真砂子の本だが、今の時代に読むからか、もともとこの作品の特徴なのか、さほど怖くは感じられなかった。
本書は大正時代の土佐の漁村が舞台。主人公の健士郎は高校の学生で、将来は異国に行きたいと考えている。
夏休みに健士郎が地元に戻った時に、地元に異国船が現れ、珊瑚を取り始めたのをきっかけに、健士郎を取り巻く状況が変わりだす。
健士郎が思いを寄せる海女のりんを、おぼれているところから救った異人エンゾ。しかし、健士郎がりんは犯されたと誤解したことから、若者組のタクマは復讐に見せかけた珊瑚強奪を行う。
健士郎の想うりんはエンゾに惚れ、健士郎と対立するタクマの妹八重は健士郎に惚れる。愛憎と、珊瑚をめぐる欲のぶつかり合い、そして、南の果てにあるという補陀落浄土(ふだらくじょうど)の伝説まで絡み合い、物語は幻想的に進み、物悲しい結末を迎える。
本書は坂東真砂子らしく、幽霊・浄土というホラー要素と、健士郎、りん、エンゾ、八重、僧の俊海等の登場人物が織り成す、セックスシーンがふんだんに登場する。
しかし、ホラー要素はさほど怖くなく、セックスシーンもどぎついものではない。
むしろ、舞台となった時代ともあいまって、幻想的な雰囲気に貫かれた小説だと言える。
本書のラストは物悲しく、涙腺が緩んでくる。
古い小説だが、今読んでも十分に楽しめるだけの品質は保たれているので、未読の人にはオススメできる小説である。
☆☆☆(☆三つ)
他のブログの反応はこちら等。
文庫が出たのも1997年のことなので、エントリがほとんどありません。
直木賞受賞者の坂東真砂子ですら、この状況なので、宮部・東野クラスを別にすれば、古い本は売れないと言うことがよくわかってちょっと悲しくなりました。
http://blog.livedoor.jp/a1505901/archives/51401782.html
http://blogs.dion.ne.jp/hir/archives/4983046.html
カスタム検索
コメント 0