戦争の影の中で光る男のロマン:ベルリン飛行指令 [小説]
佐々木譲の傑作冒険小説。
筆者にしては、珍しく北海道を舞台にしていないが、飛行士のロマンにあふれるすばらしい小説である。
昭和初期、戦争の影が世を覆おうとしている暗い世相において、全時代的な武士道・騎士道精神にあふれた戦闘機乗りが、大英帝国の領土を突破してゼロ戦をベルリンに空輸すると言う、不可能に近いミッションに挑む。
主人公となる海軍大尉のほかに、元整備兵の空曹、事務方を担当する書記官、給油のための飛行場を確保する情報将校等ミッションに関わる男達が全力を尽くす様が描かれた、プロジェクトXを想像させる男達の戦いである。
プロジェクトXのたとえを出したが、まさに本書の見所のひとつはそこで、一見不可能とも思えるプロジェクトに全力でぶつかっていく男達の美しさがある。
他方では、戦争が変わっていく中で古い武士道精神を持ち続ける、ラスト・サムライに見られるような滅びの美学もある。
この両者が渾然一体となって、本書に出てくる登場人物がひどく魅力的に見えてくるのだ。
滅びの美学という意味では、第二次世界大戦前夜で世相は暗く、戦争も大量破壊兵器による戦いがメインになり、空の男達からもロマンが失われていく中、古い武士道精神を保ち続けた日本海軍大尉とドイツの佐官、アメリカの義勇兵の描写も見事である。
佐々木譲は最近では北海道警シリーズが有名だが、本書のように冒険小説もいい味を出している。
まさに古きよきハードボイルドという感じで、私はむしろ、こういうシリーズのほうが好きだ。
☆☆☆☆(☆四つ)
他のブログの反応はこちら等。
皆さん、男のロマンを絶賛しておられます。
http://blog.goo.ne.jp/goldberg1227jp/e/c193bfc898e00f41420234d7c3dfdb0f
http://ameblo.jp/baabamama/entry-10099745598.html
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