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日本を美化しすぎかも:トンデモ! 韓国経済入門 [経済]


トンデモ! 韓国経済入門 (PHP Paperbacks) (PHP Paperbacks)

トンデモ! 韓国経済入門 (PHP Paperbacks) (PHP Paperbacks)

  • 作者: 三橋 貴明
  • 出版社/メーカー: PHP研究所
  • 発売日: 2008/01/08
  • メディア: ペーパーバック



現在金融危機に見舞われている韓国。
本書は韓国経済について述べたものだが、系統だって一本の物語になっているのではなく、いろいろな点について、韓国経済に対する報道を中心にまとめたものである。
いろいろと思うところがある本だが、それについては以下で述べたい。

【目次】
第1部 過去(日本に追いつき、追い越したい IMFの信託統治国韓国のモデルチェンジ)
第2部 現在(韓国における知財ビジネス最前線 韓国輸出製造業に見る「大丈夫か?」 バブルに踊る不動産・金融産業 奇怪な韓国有路なる産業)
第3部 未来(日本企業の韓国「包囲網」 大中華経済圏への道)


本書は韓国経済の中で特異な点に見えるものをピックアップして羅列するような形で進められている。
日本と比較することで、韓国経済の劣っている点、やや難がある点を挙げてゆき、韓国経済の先行きを危ぶむような論調で構成されている。

第1部は韓国が大日本帝国から独立してから、アジア通貨危機でIMF管理下に入るまでの経済史を描いている。
この部分については、素直に納得できる。あっさりとしか書かれていないが、導入部としてはよくできている。

第2部が本書のメインパートで、韓国経済の様々な問題点が列挙されている。
ここは、私の印象では2つに分けられる。一つは第一部同様、素直に納得できるもの。もう一つは、確かに国際標準からはずれていると思うが、昭和40年~50年代の日本でも見られたような事象であり、発展途上国から先進国への移行の過程にはつきものとも言える独自ルールだ。

韓国における知的財産がほとんど守られていない現状や、幼児が養子という形で輸出されている問題、韓国人売春婦が日・米・豪あたりで問題になっている現状等は、筆者の意見に賛成であり、素直に問題であると思う。

ただ、韓国の労働組合が過度に強くて企業に悪影響を及ぼしている問題や、株式の循環出資構造によって企業統治がゆがめられている問題については、筆者が言うようにだから韓国は駄目だという意見には賛同しがたい。
確かに、国際標準からは離れているだろうし、韓国経済のためにもならないと思う。しかし、日本でも株式の持ち合い等によって、企業統治がゆがめられている部分があるように、成熟した先進国になるに従って是正されていく程度の問題だと思う。
筆者のように一概に韓国経済を落とそうとする見方には若干納得いかないものがある。

ちなみに、韓国の不動産バブルについては、筆者の言うとおり問題だと思う。ただ、日本でもバブルがあったように、バブル崩壊の直接経験のない人が、バブルに踊ってしまうのは仕方のないところだとも思う。

そして、私が一番問題だと思ったのは、第3章。
韓国経済が中国の追い上げと、日本の反撃で沈没するのではないかというのが大まかな趣旨だが、ここでは日本を美化しすぎているように思えてならない。
シャープの液晶、エルピーダのDRAM、東芝のフラッシュメモリ、パナソニックのプラズマ等がブラックボックス化と大規模投資、知財訴訟によって、サムスン、LGを圧倒するかのような論調で書いているのだが、やや現実を楽観視しすぎではないかと思う。

加えて、携帯電話でも3G規格で日本メーカーがサムスン、LGに追いつくであろうという論調だが、これは完全にひいきの引き倒しだろう。
ガラパゴス化と言われる日本の携帯が世界で競争力を持つには、抜本的な思想転換が必要だ。筆者が言うように、日本企業は技術で優れているので、いずれは競争力を持つというのは、過去の思想であると言わざるを得ない。
そもそも、筆者は任天堂については、「映像処理能力を高めるのではなく、Wiiリモコンを振ることでゲームを進める体感型のアプローチにより、ライバルを蹴散らしている」と、技術力だけでは勝負が決まらないことを認めている。
それなのに、TV・メモリ・携帯電話については技術力で勝負が決まると見るのは矛盾ではなかろうか。

全般的に、筆者が言うように韓国経済に問題が多いのはその通りだろうし、おそらく私が現役である後30年ぐらいの間に、日本経済が韓国経済に逆転されることはおそらく無いであろう。
ただ、筆者が韓国を評して日本を意識しすぎだと言うが、私には筆者のような人々も韓国をやや意識しすぎでは無いかと思う。

内容は悪くないのだが、元々のタイトルが韓国経済という、重要度のさほど高くないテーマであることもあり、読んで楽しめる人を選ぶ本である。

☆☆★(☆二つ半)

他のBlogの反応はこちら等。
(ポジティブな評価のエントリ)
http://blog.y-aka.com/2008/05/blog-post_7846.html
http://www.amanosaizo.com/amen/2008/01/20070121_b0fe.html
http://plaza.rakuten.co.jp/tianjincn/diary/200804200000/
ポジティブな評価のエントリが多いようです。ネガティブな評価のエントリもあるのですが、若干感情的で取り上げにくい印象です。
ちなみに、この手の本らしく、トラックバックをしたくない様なエントリが複数見られたのも特徴です。








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コメント 2

天野才蔵

トラバありがとうございます、天野才蔵と申します。

韓国と商売している(ハイテク製品じゃないけど)私としては、韓国の基礎技術力の無さは、かなり致命的な欠陥のように思います。これは経済コンサルタントの著名人大前研一せんせいも日経BPのコラムで何度か書かれています。

携帯電話に関しては、日本の携帯は世界の2歩先を進んでいるような状況にあり、ガラパゴスかが進んでいて世界から取り残されている印象を受けますが、技術的には今の日本の携帯よりも2歩遅れている携帯を作ればいいので、作ることは出来るはずです。どちらかというと各国語対応が面倒なことと(日本人は日本語以外が苦手ですから)ことと、3G携帯はコスト勝負の部分があるので、今のところ参入していないのではないかと。これも日経BPあたりのコラムからの受け売りですが。

メモリに関しては、10年前まで半導体技術者をやっていた経験から言わせてもらうと、メモリの大容量化は微細化加工技術が進んでいるかいないか、つまり完全に技術力の勝負です。ただ、微細化加工技術を可能にする半導体製造装置を、日本のメーカー(東京エレクトロンとアドバンテスト)が韓国に輸出しているので、韓国の半導体メーカーが活躍できています。

東京エレクトロンとアドバンテストの2社で、半導体製造装置の世界シェアが5~6割と記憶しています(間違っていたらすいません)。この2社が韓国に見切りを付けたら、韓国の半導体産業は終わりです。

いま、韓国の通貨弱体、および二度目のIMF入りが噂されています。ドルが足りない状況です。つまり、日本から輸入するために支払うドルがなくなりつつあります。

実際今私が関わっている韓国からの輸入は、韓国メーカーが日本から材料を仕入れる金がないため、私から日本の材料メーカーに発注内示を出さないと、韓国メーカーがものを作れない状況になっています。

貴感想に対し揚げ足取りのようなことを書いてしまいました。
お気に障られたら申し訳ございません。

ポジティブ感想を書いた者の意見として受け止めていただければ幸いです。
by 天野才蔵 (2008-12-09 10:20) 

book-sk

>天野才蔵さん
コメントありがとうございます。

こういう建設的な意見なら大歓迎です。
私も、韓国経済の先行きが明るくないのはその通りだと思うのです。
原料・加工機器の輸入もおっしゃるようにこれからさらに苦しくなるでしょうし。

ただ、私は日本経済の先行きにもあまり明るい印象を持っていません。技術力はたいしたものだとは思うのですが、それで売れるものを作れるかというと疑問が残ってしまうのです。
アップルコンピュータのipodやibookもさほど技術的にはすごいものではないと聞きますが、製品としてはよく売れています。
日本企業にかけているのは、そういった種類の製品を作る能力ではないかと危惧しています。

純粋に技術力勝負の工作機械や原材料等のBtoB商品は先行き明るいような気がしますが、BtoC商品は日本市場に過度に適合したために、世界市場での競争力を失っているように見えてなりません。

日本企業に投資している身としては、復活してほしいのは山々なのですが……。
by book-sk (2008-12-09 22:23) 

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