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ネット生保を作る源流を読み取ることの出来る、保険の教科書:生命保険入門 [投資・マネー]


生命保険入門

生命保険入門

  • 作者: 出口 治明
  • 出版社/メーカー: 岩波書店
  • 発売日: 2004/06
  • メディア: 単行本



本書が発売された時の筆者の情報は以下
出口 治明(デグチ ハルアキ)
1948年、三重県美杉村生れ。上野高校、京都大学法学部を卒業。72年、日本生命保険相互会社入社。日本興業銀行(出向)、生命保険協会財務企画専門委員会委員長、ロンドン事務所長、国際業務部長、公務部長を経て、現在、大星ビル管理株式会社勤務。「日本の国益委員会」(政策提言グループ)共同代表


現在の筆者の肩書きは「ライフネット生命保険 代表取締役社長」。
本書は、筆者がなぜインターネット専業の生命保険会社の社長になったのかが理解できるような内容である。
【目次】
1.生命保険とは何か
  生命保険とはどのような金融商品か
  生命保険の歴史
  生命保険はどのような仕組みになっているか
  生命保険にはどのような種類があるか
2.生命保険会社の仕組み
  生命保険会社の組織
  生命保険会社の資産運用
  生命保険に関わる法制度
3.岐路に立つ生命保険業界
  生命保険業の直面する課題
4.生命保険とどうつきあうか
  上手な生命保険の利用方法
  理想の保険・サービスを考える


本書は、筆者が言うように、「生命保険の教科書」である。
教科書だけあって、書き方はやや硬い感じだが、単に事実を書いただけではなく、本書の出版された2004年時点での生命保険業界の問題点に対する筆者の熱い思いも読み取ることが出来る。

筆者が「第3部 岐路に立つ生命保険業界」の中で述べている将来の生保像を引用する。
2010年、東京の会社で働く男性Aさんの場合、奥さんも働いているので、死亡保障は会社のBグループ保険で十分に事足りる。貯蓄は会社の確定拠出年金(Bグループ保険とセット)が中心となる。自分の医療保険を少し手厚くしようと考えたAさんには、いくつかの選択肢がある(Aさんが富裕であれば、専属のファイナンシャル・プランナーが全ての用を足すだろうが)。会社が法人代理店になってがん保険等の医療保険を販売している。近くに支店のあるB銀行は医療保険の窓口販売にとても熱心であると聞いた。代理店に電話してもよい。知人のセールスパーソンに会社に来てもらっても良い。インターネットで、自分にふさわしい医療保険を購入するという方法もある。クレジットカード会社も医療保険の品揃えを格段に充実させている。

これを読んでどう思っただろうか?
現在2009年が始まったばかりだが、筆者の想像した2010年が来るかどうかは、微妙なラインであろう。
会社が法人代理店になって保険を売ることはほとんど無いし、銀行でも保険の窓版はまだ一般的とはいえない。クレジットカード会社の保険販売は、だんだん始まってきたところであろうか。
現在のスピード感からすると、筆者の想像した2010年は、2015年ぐらいの姿なのかもしれない。

そして、筆者は自らがインターネットによって、自分にふさわしい医療保険を購入することが出来る社会のために、会社を作った。
自らの思い描いた理想がなかなか来ないため、自らが行動したというところであろうか。

筆者は、2004年時点でセールスパーソン(保険のねーちゃん・おばちゃん)により、定期保険ばかりを売る従来の大手生保のあり方に、限界を見て、警鐘を鳴らしている。
インターネットによる保険も、他の人が手をつけていたら筆者はあえて自分でやろうとしなかったのかもしれない。このあたりは、2008年11月に筆者が新しく本を書いているので、併せて読み比べてみたい。

生命保険はだれのものか―消費者が知るべきこと、業界が正すべきこと

生命保険はだれのものか―消費者が知るべきこと、業界が正すべきこと

  • 作者: 出口 治明
  • 出版社/メーカー: ダイヤモンド社
  • 発売日: 2008/11/29
  • メディア: 単行本



本書は、「保険の教科書」としても一級品だが、2004年から2009年までの間に生命保険業界であった動きと、筆者の現在の肩書きを併せて読めば、よりいっそう楽しめる良書である。

なお、上記引用文にある「Bグループ保険」や「確定拠出年金」の言葉にピンと来ない全くの素人の人も、本書を読めば勉強になるし、少なくとも保険のねーちゃんに負けないぐらいの知識は身につくはずだ。
保険の販売員がその程度の知識しかない場合が多いので、筆者は限界を感じたのだと思うが……。

☆☆☆☆(☆四つ)


他のBlogの反応はこちら等。
(ポジティブな評価のエントリ)
http://deadbeaf.blogspot.com/2008/11/blog-post_6441.html
http://deepseafishtank.blog123.fc2.com/blog-entry-146.html
http://becomerich.jugem.jp/?eid=593
http://dbdc.seesaa.net/article/25484203.html
(ニュートラルな評価のエントリ)
http://d.hatena.ne.jp/genki31/20071203/1196676175
http://d.hatena.ne.jp/bopperjp/20080420/1208642637

新しいエントリではやはり筆者の現在の職業(ライフネット生命保険 社長)について触れています。
私は筆者の人柄は当然知らないが、自分の思う未来に向かって、具体的に行動するその姿はすばらしいと思う。

ライフネット生命保険は付加保険料を開示する等、生命保険を利用者にとってよりよいものにするための行動を続けている。その姿は、本書を通じてにじみ出てくる筆者の熱い思いからぶれていない。








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