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森博嗣の描く子供が印象に残る:探偵伯爵と僕 [小説]


探偵伯爵と僕―His name is Earl (講談社文庫)

探偵伯爵と僕―His name is Earl (講談社文庫)

  • 作者: 森 博嗣
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2008/11/14
  • メディア: 文庫



本書の特徴は、森博嗣が描く子供の姿。
ミステリとしては、最近の森博嗣らしく、あまり謎解きを重視したものではないのだが、描かれる子供の人物像は筆者独特であり、読んでいて飽きることがない。
本書のストーリー

主人公の"僕"は、学校帰りに黒い服で、ひげを生やしたアールと名乗る"探偵伯爵"に出会う。
胡散臭く思いながらも、探偵伯爵と何故か気の合う"僕"だが、夏祭りの頃に学校の友人が行方不明になる。"探偵伯爵"と犯人を追いかけているうちに、二人目の犠牲者である、クラスメートが誘拐される現場に遭遇する。
誘拐事件の顛末を舞台に、子供の視点から描かれたミステリ。


最初に読んだときは、本書の主人公である"僕"は子供ながらに頭が良すぎ、子供に似合わずいろいろなことを考えているように見える。
しかし、自分が子供の時をはっきりと覚えているわけではないが、子供の考えは意外とこんなものなのかもしれない。
子供の描写としては、珍しい方だと思うのだが、現実に近いのは実はこんな子供なのかもしれないと思ってしまう程の小説としてのリアリティがある。

事件自体も、かなり後味の悪い、それでいて現実におこったら「またか」と思われるような類の事件なのだが、読んでいて毒々しさを感じることはない。
汚い事件をあえて綺麗に描くことで、テンポが良く読みやすい小説に仕上げている。
実際に、約30分で読めたので、分量自体が少ないのかもしれないが。


なお、主人公の名前をあえて書いていないのには、わけがある。
本書におけるスパイスとしてはピリリと効いていて、物語を素晴らしく飾っている。

※文末のリンクには若干ネタバレを含むものがあるので、注意してほしい。

☆☆☆★(☆三つ半)

他のBlogの反応はこちら等。
(ポジティブな評価のエントリ)
http://ktktkt.blog.so-net.ne.jp/2009-01-02
http://d.hatena.ne.jp/tonton110/20081129#p1
http://plaza.rakuten.co.jp/tvwatcher/diary/200901020001/
http://d.hatena.ne.jp/takaochan/20081218/1229527814
http://poppo.tea-nifty.com/hatopoppo/2008/12/post-7299.html
http://y-word.cocolog-nifty.com/blog/2008/12/post-677e.html

本書に対して、ネガティブな評価のエントリは少ない。
あっさり読めるのだが、読んでみて損はない。
森博嗣ファン以外にも本書なら間違いなく勧められる。







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コメント 2

ぽっぽ

はじめまして、TBありがとうございます☆
森博嗣さんの描く子供はわんぱく盛り、元気いっぱい!という分かりやすい感じの子供像ではなく、子供を大人と同等の1人の人間として、真っ向から受け止めて描かれているように感じました。
おっしゃられているように、実際の子供というのは、こういうものなのかも、と妙に納得させられてしまいました。
森博嗣初心者にもオススメの本ですね。
by ぽっぽ (2009-01-11 09:14) 

book-sk

>ぽっぽさん
コメントありがとうございます。
子供って、腕白なところもあるけど、この本にあるようなある種思慮深いところもあるのではないかと思ってしまいました。雰囲気は異なるけど、宮部みゆきさんの本にも同じような賢い子供はよく出てきますよね。

森博嗣初心者には間違いなくオススメです。
S&Mシリーズ、Vシリーズなど四季の出てくるやつは、癖が強くて人を選ぶでしょうから……。
by book-sk (2009-01-12 09:58) 

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