古きものに殉じる美学:憑神 [小説]
浅田次郎の時代小説。
筆者得意の泣かせる展開で、人の生きる意味を見つめ直す良いきっかけになる。
本書のストーリー
主人公の別所彦四郎は幕末の御家人。出世の神様と間違えて祈った三巡稲荷は、三巡の災厄を呼び寄せる稲荷だった。
貧乏神、疫病神は人柄と周囲の助けで他人に振り替えることにより何とかやり過ごすが、最後の死神が来るに当たっては容易に他人に振り替えることが出来ずに懊悩する。
そして、主人公は自らの信念と生き様に基づいて、自分で死に神を抱え込むことに決める。
浅田次郎らしく、本書のラストも泣かせる展開になっている。
明らかに新しい時代が目前に迫っており、自分さえその気になれば前途洋々としているにもかかわらず、自ら死に神を抱え込むことで「義」に殉じることを決める主人公。
無限の命を持つ神様に、死ぬことから逃れられない人の生き様を見せつけることで、輝く人生を送る主人公。
このラストシーンは、簡単に予測がつくけどジーンと来る。
このように、泣かせる展開は筆者のお得意でありこの方面では外れがないのだが、私が筆者の作品で重視するのは笑いのエッセンスである。
泣き+笑いが筆者の神髄なので、笑いの部分がどの程度さえているかで筆者の作品は出来が決まると思っている。
そして、そういう意味でも本書は合格。
貧乏神、疫病神、死神の神様をはじめ、修験道を極めた小文吾など、キャラクターに人間味があふれており、クスクス笑いがこみ上げてくる。
笑いと泣きが絶妙のバランスで存在し、軽く読むことの出来る本書は落ち込んでいるときなどにもオススメである。
☆☆☆☆(☆四つ)
(ポジティブな評価のエントリ)
http://blogs.dion.ne.jp/beadwork/archives/8435578.html
http://kanaisocho.blog77.fc2.com/blog-entry-39.html
http://blog.goo.ne.jp/zen-en/e/454b21f1c2a24e0a9a7bcb0848197b8d
http://blog.goo.ne.jp/oj0216nm/e/b4ea1648b38a577f52199b142ca25bc4
http://rui31ct.cocolog-nifty.com/blog/2007/05/post_2082.html
(ネガティブな評価のエントリ)
http://wakimiti333.sblo.jp/article/27476823.html
本書は映画化もされているようです。主人公は妻夫木聡か……
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