大阪人気質を肯定的なネタにした:プリンセス・トヨトミ [小説]
「鴨川ホルモー」では京都を、「鹿男あをによし」では奈良を舞台にしてぶっ飛んだ小説を書いた万城目学が、今度は大阪を舞台にしてはちゃめちゃな小説を書いた。
今までの作品同様、パワフルで、笑いに満ちた小説である。
本書のストーリー
大阪には豊臣家の末裔を守るための仕組みが江戸時代より存在していた。その名も”大阪国”。大阪国は明治政府との間に結ばれた「条約」によって、国から様々な庇護を受けてきた。
しかし、堅物で有能な会計検査院の検査官が大阪国の偽装団体、OJOに対して検査に入ったことから、大阪国は存亡の危機を迎え、豊臣家の末裔と大阪国総理大臣の息子を巻き込んだ大騒動に発展する。
「鴨川ホルモー」や「鹿男あをによし」に負けず劣らずのぶっ飛んだ設定を持つ本書。
キャラクターも個性あふれるメンバーで、会計検査院の3人、大阪国の面々、豊臣家の末裔と、全てが個性的で生き生きとしている。
キャラクターの持ち味と、設定の鋭さに寄って支えられた本書は、純粋なエンタテイメントとして一級品の完成度を保っている。筆者の代表作と言っても良い出来である。
加えて、本書がさらに素晴らしいのは、大阪の人間の描写と親子の絆が非常にうまく描かれているところ。
大阪の人間の描写としては、大阪国の設定から始まる一体感の描写が大阪人気質の本質を鋭く表している。
私も大阪出身だからわかるのだが、大阪はよく言えば非常に一体感が強く、悪く言えば非常に同調圧力の強い・個性を許さない土地なのである。
そのような一体感が非常にうまく描写されており、筆者の洞察力には感心させられる。
また、親子の絆もそれぞれの形をとりながらも、どの親子もあこがれを伴ってみるような絆が描かれており、感動させられる。この、親子の絆こそが、本書を笑いだけではない作品にするための、非常にパンチの効いたスパイスとして活かされている。
筆者のファンに限らず、面白い小説を探している人全てに自信を持って進められる作品である。
☆☆☆☆★(☆四つ半)
他のBlogの反応はこちら等。
(ポジティブな評価のエントリ)
http://blog.livedoor.jp/ykyama_g3/archives/51901536.html
http://blog.goo.ne.jp/oj0216nm/e/fbbacc2adf305ae04f2e406a83e91da0
http://s-g.blog.so-net.ne.jp/2009-07-19-1
http://blog.goo.ne.jp/randaudy/e/54b550dfa308080aad1e2a6813c704bb
http://nanamemo.jugem.jp/?eid=1756
http://lbn.hizuki.lomo.jp/?eid=863127
おおむね高評価。直木賞を逃したのは返す返すも残念ですが、筆者ならいずれは獲るのだと思います。
重松清とは違った、味のある親子の絆も一見の価値ありです。
面白かったですね。途中から映画化するなら誰がいいかを考えていました。松平健はすぐ決まり。あとは誰がいいかなあ。
by punchigoo (2009-07-25 18:37)
>punchigooさん
コメントありがとうございます。
映画化すると誰がいいんでしょうかねぇ
あんまり芸能界に詳しくないですが、
旭:滝川クリステル
鳥居:爆笑問題田中
あたりですかね。
中学生軍団はさすがに思い当たりませんが。
by book-sk (2009-07-25 23:08)