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オウム真理教につながる日本の病根:さよなら、サイレント・ネイビー―地下鉄に乗った同級生 [社会]


さよなら、サイレント・ネイビー―地下鉄に乗った同級生

さよなら、サイレント・ネイビー―地下鉄に乗った同級生

  • 作者: 伊東 乾
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2006/11
  • メディア: 単行本



「地下鉄に乗った同級生」とはオウム真理教の豊田亨被告(高裁で死刑判決を受け、最高裁に上告中)。
筆者は東大で物理学を学んだ科学者である豊田被告が何故オウム真理教に走ったかを明らかにし、それは誰にでも起こりうることだと主張する。
そして、オウム真理教について明らかにすることが、同種の事件を再発させないための最善の手段であるとして、本書を記している。

【目次】
第1部 出来事
  苦行―中目黒発・東武動物公園行
  筋書―アリジゴクの仕掛け
  創発―行為は気づきに先立つ ほか
第2部 証言
  拉致―騙された罪の重さ
  調教―現象と詐術の接木
  麻酔―窒息するニューロンたち
第3部 伝言
  手紙 さよなら、サイレント・ネイビー


本書は他のオウム本と異なり、犯行の詳細やオウム裁判の様子を描いたものではない。
本書の多くは、筆者による推論によって物理学の秀才が何故出家したか、どのように洗脳されていったかを組み立てることに費やされている。

筆者の推測では、新たなことへの挑戦できない鬱屈を抱えた筆者が、時代背景もあってオウム真理教に興味を持ち、オウムの手口にはまって出家・洗脳されてしまったとのことだ。
ハッキリ言うと、筆者他のエリートコースの若者たちと豊田被告を分けたものは、ほんの少しの違いでしかなかったのだ。
そして、その結果が日本犯罪史に残る大事件の実行犯と、音楽家・作家・大学教授を兼ねる成功者という大きな差になってしまっている。

オウムが使った多くの手口は、科学的に当然の手法であるが、それを宗教という言葉で飾り立てることによって、エリートと言われる人物も簡単にだましてしまったのである。

現在、オウム真理教はほぼ壊滅しており、直接の被害者が再生産される可能性はほとんど無い。
しかし、今の日本ではオウムの原因・手口は解明されておらず(あるいは、公安・警察等では情報があるのかもしれないが、共有されておらず)、同種の事件はたやすく起こりうる。

借金・麻薬・カルト宗教は人間が、自らの意志を捨て、奴隷に落ちてしまう現代の3代危機
とも言える。
そうした落とし穴に前途ある若者がはまらないように、筆者が言うようにオウムの教訓は日本国民全てで共有するべきであろう。


以下は余談になるが、本書に影響されて、原因の究明を自分の中で行うべく、私は図書館で麻原彰晃の本を探してみた………。
ところが、一冊も存在しなかったのである。
名前は伏せるが、他の新興宗教の教祖が書いた本は多く収録されていることから、最初から無かったわけではないだろう。オウムがワイドショーを賑わせ、若者が新たに堕ちてゆく危険がある時期に書物を隠すのはわからなくもないが、今になっても書籍を隠匿・撤去するのは明らかに現実逃避だ。
同じ過ちを繰り返さないためにも、オウムから目を背けるのではなく、多くの人がオウムの原因・手口を共有する。筆者は、そして、私も、そのような科学的対応の取れる国になってほしいと願っている。

☆☆☆★(☆三つ半)
(ポジティブな評価のエントリ)
http://beastableman.blog45.fc2.com/blog-entry-88.html
http://blog.livedoor.jp/dokuryo/archives/51349887.html
http://anecdotes.cocolog-nifty.com/la_dolce_vita/2007/03/post_7d2c.html
http://hidebook.seesaa.net/article/57945191.html
http://chogc.blog9.fc2.com/blog-entry-326.html
(ネガティブな評価のエントリ)
http://d.hatena.ne.jp/LondonBridge/20070324/1174683547

確かに、書き方、考証については賛否両論有る本ではある。
また、”賛”の中でも、オウムの洗脳のテクニックに興味を引かれた層と、再発防止の取り組みが無いことに興味を引かれた層に分かれる。
私は後者だが、どちらもあることが本の読み口としては非常に興味深い。





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