職人と経営者の間で:ジェネラル・ルージュの凱旋 [小説]
救急医療をテーマにした、「チーム・バチスタの栄光」シリーズの第3作。
時系列的には、「ナイチンゲールの沈黙」の直後で、「螺鈿迷宮」の直前に起こった物語となる。
【目次】
第一部 潜航
序章:海の底
1章:オレンジ・スクランブル
2章:血まみれ将軍
3章:コミットメントの空隙
4章:オレンジの不良債権
5章:ハヤブサと眠り猫
6章:ピンストライプの経済封鎖
7章:多重陰謀
8章:ホンキートンク・ガール
9章:新人の陥穽
10章:沈黙の少女
11章:ドクター・ヘリ
第二部 戴冠
12章:赤煉瓦の泥沼
13章:田口講師の災難
14章:フジワラ・ナース・ネット
15章:エシックス・エントリー
16章:旧友
17章:ジェネラル・ルージュの伝説
18章:泥沼エシックス
19章:天窓の歌姫
20章:火喰い鳥の告知
21章:泥沼の中のジェネラル
22章:司法と倫理
23章:医師法二一条の影
24章:ハヤブサ美和
25章:リスクマネジメント委員会
26章:エシックスの終焉
27章:ジェネラルの退場
28章:カタストロフ
29章:口頭試問
終章:岬
医者の世界も、サラリーマンの世界も似たようなところがある。
事務方からはコストカットの要請と圧力が絶えず続いており、現場に生き甲斐を見いだす職人肌の人間は、理想の実現との狭間で深い苦悩を味わうことになる。
逆に、医者は自分の腕で生きることが出来るので、自分のクビをかけて理想のために突っ張ることがサラリーマンよりは容易に出来る。
そうした背景を持った、凄腕の救急センター部長、ジェネラル・ルージュこと速水が本作の主人公。
桜宮の救急医療を一手に引き受け、ドクター・ヘリを桜宮の空に飛ばすことを夢見る速水が巻き込まれた汚職疑惑が本書のメインストーリー。
自分の理想を実現するために、あえて泥をかぶった将軍。
その理想、行動力、引き際全てが素晴らしい。
本書は、主人公速水の他に、いつもの田口・白鳥のコンビと彼らを支える藤原・姫宮の看護師、エシックスで倫理を振りかざす沼田助教授など脇役のキャラクターも際だっており、シリーズの読者なら楽しめること間違いなしだ。
だんだん田口・白鳥の影が薄くなってきているのだが、それは他のキャラクターの造形がしっかりしてきたと言うこと。こうなってくるといくらでも続けることの出来るシリーズになるのだろう。
☆☆☆☆(☆四つ)
他のBlogの反応はこちら
(ポジティブな評価のエントリ)
http://blog.canpan.info/faltboat/archive/602
http://ziten.cocolog-nifty.com/blog/2009/11/post-9709.html
http://kanade08.exblog.jp/11598210/
http://d.hatena.ne.jp/akilanoikinuki/20091123/1258978752
http://kuronekotei.blog17.fc2.com/blog-entry-594.html
http://ameblo.jp/yuko-fasttalker/entry-10389213222.html
タイトル・表紙からして、ヘリコプターがメインになると思っていたら肩すかしを食ってしまった。
構想段階からキャラが動いて内容が変わったりしたのだろうかと思ってしまう。
コメント 0