定められた運命とその流れの中で生きる男:あるキング [小説]
伊坂幸太郎の最新作。
シェークスピアの「マクベス」、「ジュリアス・シーザー」へのオマージュとして、決められた運命を歩む人間が、その流れの中で生きる様子を描く。
いつもの伊坂幸太郎よりは若干重たいが、それでも軽い、ひょうひょうとした感じは健在。
本書のストーリー
弱小プロ野球チームの救世主として期待されて生まれた主人公の山田王求。父親が人を殺したことから、裏街道の人生となるが、運命通りプロ球団に入団して、規格外の活躍をする。
打率9割。ホームランか四死球か。そんな彼を最後に待ち受ける運命とは……。
「いずれは王になるお方」
「マクベス」の有名な台詞。その台詞が黒ずくめの魔女3人から語られるのは本書の主人公・王求も同じなのだが、王求が運命づけられているのは国の王ではなく、野球の王。
生まれる前から、運命を決められていた王求が予言通りに圧倒的な王となり、その圧倒的な力が故に疎まれ、「ジュリアス・シーザー」と似たような末路をたどる。
そうしたストーリーを彩る脇役達はまさに伊坂小説そのもの。
現実感の薄い、キャラクターの立った人々だ。
両親、バッティングセンターの管理人、中学時代のチームメイト、球団のオーナー、王求の女達……。
どれもがあり得ない人々で、それでいてすがすがしい。
伊坂幸太郎の持ち味は出ているといえる。
が、本書に関しては、否定的な部分もある。
本書は若干分量が少なく、それが故にはしょられた感が否めない部分も多々存在するのだ。具体的に指摘することが出来ないのだが、消化不良の感覚が残る。
元々は連載ものだったらしいのだが、つなげて読むと終わった後に気になる点が多すぎて、十分に堪能したという満腹感を味わえない。
私の率直な感想をいうと、筆者の小説の中ではちょっぴしざんねんな部類に入るかも……
☆☆☆(☆三つ)
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「モダンタイムス」といい、本書といい、最近の伊坂幸太郎作品は若干期待はずれ。実は連載に向いていない作家さんじゃないのかなぁ……。
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