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自爆する若者たち―人口学が警告する驚愕の未来 [社会]


自爆する若者たち―人口学が警告する驚愕の未来 (新潮選書)

自爆する若者たち―人口学が警告する驚愕の未来 (新潮選書)

  • 作者: グナル ハインゾーン
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2008/12
  • メディア: 単行本



これは非常に衝撃的なものの見方を知ることの出来る本である。
戦争・内戦が起こるのは何故か?
それは、若者の男が多い国では、ポストが足りずに無謀な試みに突き進む者が増えるからである。


【目次】
1 古くて新しい世界敵―ユース・バルジからの過剰な若者たち
2 若者たちはどこに住んでいるか?
3 人口統計に見る征服者の出自とヨーロッパの世界征服という「奇蹟」
4 超大国の昨日と明日―若者の増加と厳格な所有権構造
5 ユース・バルジと国境なきテロリズム
6 入れてもらえる者、もらえない者


紛争の原因としてすぐに思いつくのは、貧困・対立する宗教・独裁者の野望等だろう。
しかし、本書によると、紛争の原因は15歳~29歳の人口が、総人口の30%を超える”ユース・バルジ”状態になることであるという。
若者、特に男子が過剰になると、相続権のある長男以外の子供にポストが行き渡らなくなり、力も時間もありながら希望がない状態となり、暴発してしまうのである。
こうした事態は古今東西で普遍的に見られる現象であり、貧困や宗教や思想は後付の理由に過ぎないのだ。

現時点で政情が不安なパキスタン・イスラエル(ガザ地区)・コンゴ・ソマリア等、ほとんどの国でこのパターンが見られる。
逆に、共産党独裁による人権の弾圧が行われており、内戦・分裂を予言する人が多いながらも、中国においては”ユース・バルジ”状態は脱しているので、大きな政情不安は発生しない。人口の多寡ではなく、あくまでも割合が問題なのだ。

本書の考えに基づくと、紛争解決のための国際援助や会議等の力は大きくなく、時間稼ぎに過ぎない。
”ユース・バルジ”状態にある国は、何らかの形で暴発し、混乱を発生させるのだ。
そう考えると、絶望的になるし、どうせ紛争をするのなら国境を越えずに内戦の形でけりを付けてほしいと言う無責任な考えに至ってしまう。

本書には”ユース・バルジ”から来る紛争の決定的な解決法は書いていないので、絶望的な気持ちになるだろう。しかし、本書の提示する見方は斬新であり、否応なく世界に目を向けねばならない現代の人なら、読んでおいて損はないだろう。

☆☆☆☆(☆四つ)

本書の提示する未来
・若者の人口が多い国は、混乱に巻き込まれる
・人口の多い国の紛争に対して、人口の少ない先進国が介入するのはますます難しくなる
・人口は力の源泉であり、人口の減っている日本・ロシア等の国々の成長力は悲観的
・人口は多くても、若者の割合の少ない中国は比較的安定している。むしろインドの方が危ない
・北朝鮮の暴発は底まで心配しなくていい

本書を読んで残った疑問
・本書には、大航海時代にスペイン人が無謀な航海に出られたのは、相続権のない次男以下の男は新世界において出来れば富を、最悪でも女を得ることの希望が原動力になったとある。
→では、現代の中国のように男女比が非常にゆがんでいる国では、女を求めて暴発することはないのだろうか?
・本書は、ポスト不足が暴発の引き金になると主張する。
→デフレで違う意味でのポスト不足が明らかな日本。そこに住む私たちには、ポスト不足がこんな大きな原動力になるとは感じられないのだが……


他のBlogの反応はこちら
(ポジティブな評価のエントリ)
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http://ameblo.jp/hiromiyasuhara/entry-10201215977.html
http://mietzsche.dtiblog.com/blog-entry-116.html
(ネガティブな評価のエントリ)
http://blog.goo.ne.jp/continentalop/e/a38c6c673b4e622520bebb5affe7ae86
http://tokyotram.blogspot.com/2009/07/blog-post_09.html
斬新な見方で、救いのない結論をストレートに述べているので賛否両論になっている。
しかし、私は本書を読んで得るものは多いと感じている。
人口と国のパワーの関係は、常に意識しておくべきだろう。





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コメント 2

mietzsche

こんばんは。初めまして。

こちらのブログを紹介いただき、ありがとうございます。
私も、この本はとても面白いと思いました。
いろんな本を読んでまだ残った疑問の、すべてとは言わずとも相当の部分を解決しているように感じます。

日本は、意外と危険水域に近いような気がします。
まだポストにあぶれた人が目立つ割には比率として少ないので、実際の騒乱には至っていないのですが、いまの倍~数倍程度失業率が増えてくると、ちょっとしたきっかけで暴動が起きかねないように思います。
by mietzsche (2009-12-28 00:52) 

book-sk

>mietzsche さん
コメントありがとうございます。

本書の説はあくまでも歴史的事実をベースにした実績で、必ずしも将来を保障するものではないのですが、多くの疑問を解決してくれる斬新な本でしたよね。

筆者はヨーロッパ人なので、日本・中国についての言及が少ないのですが、日本人なら歪な形でポストにあぶれている日本人を見ているので、気になってしまいますよね……。
by book-sk (2009-12-28 21:30) 

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