日本の雇用に関する真実の姿:雇用の常識「本当に見えるウソ」 [社会]
昨今は雇用問題が争点になることが多く、いろいろな立場から意見が発せられている。
中には、同じ事実に対して正反対の意見が述べられていることも多く、どの考え方が正しいのかわからなくなる。
そうした現状にあって、本書は雇用の真実の姿を写す”ラーの鏡”の様なものであり、事実を正確に掴むことが出来る。筆者は漫画「エンゼルバンク」のモデルとなった人物だそうで、転職の現場にかかわっている事がイデオロギーより現実に目が向いた本書を作るのに役立っているのだろう。
【目次】
第1章 日本型雇用崩壊の噂を検証する
検証1終身雇用は崩壊していないい
検証2 転職はちっとも一般化していない
検証3若年の就労意識は30年前のまま 検証4本当の成果主義なんて日本に存在しない
識者はこう見る〈1〉企業は、「大騒ぎ」を利用してモードチェンジしてきた 中村圭介
第2章 最近流行の言説は本当か
検証5派遣社員の増加は、正社員のリプレイスが主因ではない
検証6正社員は減っていない
検証7女性の管理職は増えない
検証8ホワイトカラーに少子高齢化は無縁
第3章 理論武装された俗説を斬る
検証9労働分配率・ジニ係数・内部留保3点セット
検証10「若者が可愛そう」=熟年悪者論
検証11引きこもりが増えたように見える理由
検証12「昔は良かった」論のまぼろし
検証13ワーキングプアの実態は「働く主婦」
Noteと解説
Note1検証結果の整理
Note2錯覚を起こすメカニズム
Note3次世代に向けた日本社会のもがき
第4章 2つの暴論
提案1ガラパゴス的な日本の雇用を普通の国にする。
提案2移民受け入れ―教育安保という世界戦略
識者はこう見る〈2〉黒白2つの労働市場をグレイのハイブリッドに 本田由紀
本書は雇用についてよく見られる言説を例示した上で、それらに対する反論として”真実の姿”をデータ付きで提示している。よく見られる言説として引き合いに出されているのは森永卓郎、城繁幸、雨宮処凛と言った人々。
いかにもイデオロギーに基づいた主張に満ちた人々である。
本書を読むと、いわゆる日本的雇用が未だに健在であることもわかるし、ワーキングプアもさほど深刻な問題でないこともわかり、世代間格差も論客が煽るほどに厳しいものではないことがわかる。
今この時点の労働環境の理解をしたいなら、本書が第一選択肢になるのだろう。
ただし、今後どうしていくべきかについては、本書ではあまり取り上げられていない。
筆者には色々言いたいことはあるのだろうが、紙面の都合で申し訳程度にとってつけられている。
そういった意味で、最初に挙げた城繁幸、雨宮処凛と言った人たちとかみ合わないのは当然だ。
彼らは現実は印象ですませて、有るべき未来の姿について熱く語っているのだから。
いろいろな思惑を持った政治家が迷走気味の議論をしているところに官僚が現実のデータを見せるがごとき本書。民主党政権になって、労働政策がますます迷走しそうだからこそ、読んでおく価値が有る。データも多いので、手元に置いておくのも良いだろう。
☆☆☆☆(☆四つ)
雇用問題は、長期的には人口減少から来る労働力不足が確実なんだけど、短期的には不況・ミスマッチから来る職不足がそびえている。このどちらを重視するかで、論者の立ち位置が一つ決まってくるような気がします。
筆者は将来の労働力不足を不安視する立場。
現在の政治とは逆行しますが、私も将来の労働力不足に軸足を置くのは正しい考え方だと思っています。
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(ポジティブな評価のエントリ)
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やっぱり落ち着いたデータは高評価。
皆さんいい評価です。個人的には電車で読みやすいように表紙の絵を工夫してほしかったのですが
2009-12-30 21:31
nice!(3)
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