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社会主義へのあこがれ:税を直す [社会]


税を直す

税を直す

  • 作者: 立岩真也
  • 出版社/メーカー: 青土社
  • 発売日: 2009/08/24
  • メディア: 単行本



税を直すと言うタイトルから有るように、
筆者はここ10年~20年で税金が歪められたという思いを抱いている。
それを”直す”事を提言している。

【目次】
第1部 軸を速く直す―分配のために税を使う
  要約的な短文
  分配のために税を使う
  何が起こってしまったのか
  労働インセンティブ
  流出
  法人税について
第2部 税率変更歳入試算+格差貧困文献解説
  所得税の累進税率変更試算
  格差・貧困に関する本の紹介


本書の基本の主張は以下の通り。
1.税金は社会配分なので、多く稼いでいる人から多く取って収入の少ない人に広く配分するべき
2.累進課税を強化する方が”公平”だ
3.高額所得者に累進強化しても労働インセンティブ減少・海外流出が起こるとは限らない
4.法人税もしっかり多めに取るべき

いかにも社会配分を重視する社会主義へのあこがれに満ちている文章だ。
結論は昔の累進課税へ戻すという点でも、飯田泰之氏などとは過程が180度異なる。

これはこれで一つの考えだと思うが、私には賛成できない。
一番賛成できないのは2の考え方で、累進強化は公平だとは思えない。
例えば、1,000万円以下の税率を30%、1,000万円超の税率を80%とした場合、
一年で5,000万円を稼いだ人には税金が3,500万円かかるのに対して、500万円ずつ10年で稼ぐと税金は1,500万円で済んでしまう。
この制度のどこが公平なのだろうか??

また、3.の論点についても、労働インセンティブの減少が主張されるが、実際に起こるとは限らない。と言った主張で止まっており、労働インセンティブは減少しないと言う積極的な証拠はあまり示されていない。


日本は幸せなことに本当の社会主義を経験せずにここまで来ることが出来た(社会主義類似の制度は多かったけど)。だからこそ、ここまであからさまな社会主義へのあこがれを隠さない筆者が出てくるのだろうが、筆者が言うような制度になったら、社会から希望がまた一つ消えてしまう。


また、以下は私の持論だが、筆者のような主張は日本では受け入れられないと思われる。
日本人は中福祉中負担が好きだと思っている人は多いが、実は、アメリカ並みに低福祉低負担を思考してると思われる。
だって、給与や年金への課税を強化して無年金者やニート、失業者への給付を厚くする政策なんて実現しそうに思えないでしょ。

このように、かなりイデオロギー全開の本書。
一方の立場としてならば、読む価値はある。

☆☆(☆二つ)

☆が少ないのは内容を評価しないからではない。内容だけなら☆三つでもいい。
ただ、文章がいかにも文壇の社会学者が書きましたと言った文体なので、非常に読みにくい。
ビジネスの現場に出たことがない人ならこんな文章を書くのだろうが、読みにくい上に非常に自信が無く見える。
それに加えて、うざったいぐらいまでの注と引用にあふれており、学術論文の雰囲気に満ちている。
本文中に、「累進強化によるインセンティブ減少が言われているが、それに対する反論はある。但し、そうした文章は学術的で一般に届きにくい」と言う趣旨の表現があるが、それを言う本書が一般に届きにくい文章なのだ。

他のBlogの反応はこちら
(ポジティブな評価のエントリ)
http://71015011.at.webry.info/200911/article_2.html
http://d.hatena.ne.jp/Arisan/20090928/p1
http://blog.goo.ne.jp/tokawaii/e/edcb882ab2bdd7d817aec09db76e92f7
http://civilesocietyforum.com/?eid=2366
http://d.hatena.ne.jp/eirene/20090919/1253325730
http://eulabourlaw.cocolog-nifty.com/blog/2009/09/post-05db.html
高評価多し。
ネットの世界は右寄りって言う人がいるけど、決してそんなことはない。
2ちゃんねるの周辺を除けば、(amazonのレビューを含めて)左寄りの意見の方が賛同を得やすい気がする。






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