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素人の理解するリフレ論 [opinion]

リフレ政策についての論争が活発になっている。

私は、経済関係の本を読むのは好きだけど、法学部卒でIT関係の仕事に就く経済・金融の素人だ。
その素人から見た脱デフレに向けた経済議論の理解を整理してみる。
専門家から見ると、いろいろ理解が怪しいところはあると思うけど、そこは素人はこの程度の理解なんだと思って温かく見守ってほしい。

まず、現在の日本がデフレであることを否定する人はほとんどいない。これは前提。

次に、デフレということは需要が供給を下回っているということ。
これがいわゆる需給ギャップといわれるものかな?
名称はともかく、デフレを脱却するには、供給を絞るか需要を増やすしかない。
グローバル化が進んで、外国からのものの流入をとめることができない現在では、供給を絞ることは難しいので必然的に需要を増やす方向で考えることになる。
ここから先が、学者・政治家・評論家など、個々人の意見がばらばらになるところと理解している。

それぞれを整理して、最後に自分の考える各政策の成算を書いて見る。


まず、ひとつの処方箋として主張されるのが、古典的なケインズ政策。
供給が少なくなっているのだから、税金を使ってバンバン公共事業を実施すれば、官需によって需給ギャップが埋まるというもの。この際にどんな公共事業をやるかはあまり重要ではない。人のいない田舎に立派な箱物を作ってもいいし、極端な話だと人を雇って穴を掘って埋めなおす事業をやってもいいというもの。
極論を抜きにすると、麻生前総理が志向したのはこの方向性だと思っているし、三橋貴明氏なんかはこの路線かな?


次は、経済政策といっていいのかどうかわからないけど、セーフティネット充実によって国民にお金を使わせようとする政策。年金・社会福祉で生活がバッチリ守られていれば、人はお金を溜め込まずに使う”はず”だから、自然と需要が喚起されるというもの。
労働組合関係の人はこういった主張が多いし、今の民主党は基本的にこの路線だと思う。


次に主張されるのが、いわゆるリフレ政策。
日銀が紙幣の供給量を増やすと、市中にお金があふれて、お金の価値が下がる。
それを前提に、日銀がお金の供給量を将来にわたって増やすことを約束する。そうすると、お金の価値が下がることがコンセンサスとして成立し、みんなが価値が下がる前にお金を使うようになるので、需要が喚起され、デフレを脱却できるというもの。
これは今まで日本では政策としては試みられてこなかった。
勝間和代氏、飯田泰之氏、高橋洋一氏なんかはこれを主張していると理解してる。


最後は、国の政策によって需要を喚起するのは難しいので、規制緩和を進めて民間から新しいサービスを生み出し、それによって需要を喚起しようとするもの。
非常に単純化していうと、日本企業がIpodのような製品を作り出せば、それを買い求める人は莫大な数になるので、周辺サービスを含めてギャップを埋めるに足りる需要ができるだろう。そのために国にできることは少ないから、せめて邪魔しないように規制緩和をしようとするもの。
野口悠紀夫氏、池田信夫氏あたりはこんな路線かな?

ここまでが私の大雑把な理解。
かなり間違っている部分も多いかも……

─────

ここからが、私の各政策に対する評価

まず①は、今まで小渕政権や麻生政権でやってきたように、当座しのぎにはなるけど、支出がとまったら景気が悪くなるし、結果として財政赤字が残るだけに思える。私はこの政策を支持できない。
また、仮に支出額を莫大なまでに増やせば効果が出るのだとしても、この手の政策は恩恵を受けられる人とそうでない人の差が激しく、しかも、政治家や役人の恣意的な決め方で恩恵を受けられる人が決まる。
こんな不公平な政策はとても支持できない。

次に②は、そもそも効果が疑わしい。
セーフティネットを完備したからといって人々がお金を使う保証はない。
しかも、セーフティネットが財政赤字を超えて永続することまで信じさせるのは非常に困難だ。

①②については、利権・支持団体へのサービスにつながるから政治家は好むのだろうけど、経済学者でこの主張をする人は少数(ぱっと思いつかない)なので、実効性に乏しいと判断して差し支えないだろう。

─────

ここからが本番

③については、反対派からは、日銀がインフレを作り出すことは不可能なのだから、そうした期待を巻き起こすことも不可能だと反論される。この政策については、実現性があるなら非常にいい政策だと思えるので、実現可能性が肝になるのだろう。

で、その実現可能性についてだが、私は難しいと思っている
その理由は、まず日銀が市中にお金を供給する方法として、(A)銀行の持つ国債などを買い上げる方法と、今は法律上で禁じられているらしい(B)政府が発行した国債を買い上げ、政府がそのお金で公共事業を実施する方法がいわれる。
このうち、(A)については、日銀から銀行への押し貸しはできない上に、日本の銀行は現金を積み上げて収益率が落ちても、さほど株主から叩かれないのであまり効果はないだろう。
次に、(B)については、結局①の古典的ばら撒きに戻ってきてしまう。ばら撒きでない効果の高い公共事業の内容とやり方が需給ギャップを解消できる規模で存在すればいいのだが、そうした公共事業のあり方に関する主張を私は見たことがない。
これらの理由で、私は本政策の実現は難しいと思っている。

ただし、この政策は今まで日本で実施されたことはないんだし、インフレ目標を世間が信じる可能性はゼロではない(やってみないと分からない部分が多分にある)ので、やるだけやってみることには大賛成
極論すると、亀井静香日銀総裁とかにすれば、インフレを信じる人も出るかもしれない。
弊害として制御不能の大インフレになると主張する人もいるけど、それでもデフレよりはましなんじゃ無かろうか?昭和の狂乱物価程度のインフレなら望むところだろう。

まとめると、リフレ政策の効果には懐疑的だけど、やるだけやってみることに対しては賛成。
このまま放置しても、意味不明な公共事業は実施され続けるのだし、そう考えると今よりは悪くなりようがない。だったら試す価値は十分にあると思う。

最後に④について。規制緩和は大賛成。
ただ、それによってイノベーションが起こって需要が喚起されるかどうかは運しだい。
これも、やってみる価値は十分にあるどころか反対する理由は全然ないのだけど、それだけでデフレ脱却は期待はできないかな?というのが正直なところ。

ここまでが私の理解。
間違ってるかもしれないけど、今の私の結論は「規制緩和を進めつつ、一応インフレターゲットを導入してみる」ってところかな。

でも、こう考える人が今の政治状況を見ると、手詰まり感が漂っている。
どう考えても、旧来の方法にしがみつくメリットはないだろうし、色々と足掻くなら今のうちだと思うんだけど、自民党にも民主党にも期待できそうにないのが悲しい。

最後に。
間違った理解があれば、コメント欄などで指摘いただけると、理解が進むのでありがたいです。





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コメント 1

AKI

興味深く読ませて頂きました。
私は4つの手法のどれもが必要だと思います。

1.国債増発
デフレギャップを埋めるための財政出動は必要不可欠です。
公共投資は重点項目を決めて、成長産業として育成できるものに特化すべき。
あとはインフラのメンテナンス。
高度成長期に建設したインフラは耐用年数を迎えているので、更新が必要です。
耐震対策等の安全対策については、民間主導では対策が進まないので、これは政府の役目として実施するべきです。

2.セーフティネットの拡充
これは少子化対策に特化すべきです。
少子化対策であれば、投資したお金に対するリターンが見込めます。
子供が増えること自体がセーフティネットにもなります。

3.リフレ政策
デフレの一番の原因はこれでないかと考えています。
世界各国は積極的に行っていますが、仰るとおり日本では実施されたことがありません。

4.規制緩和
規制緩和はデフレ中に行っても効果はありません。
効果がないどころか、格差拡大を招いてしまいます。
これは小泉改革で実証済み。
デフレ脱却後の更なる経済成長策として用いるべきでしょう。
by AKI (2010-09-11 15:38) 

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