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普通じゃない人が虐げられている:ワーキングプア時代 [社会]


ワーキングプア時代

ワーキングプア時代

  • 作者: 山田 昌弘
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2009/06/12
  • メディア: 単行本



「婚活」や「パラサイト・シングル」で有名な山田昌弘がワーキングプアを論じた本書。
相変わらず学術的な香りはしないのだが、目の付け所は悪くなく、ハッとさせられる箇所もある。

【目次】
第1部 ここがおかしい社会保障
  生活保護給付より低い最低賃金額―最低賃金の意味変化
  壮年・親同居未婚者の今後―親による社会保障の限界
  高学歴ワーキングプア―勉強が報われないという現実
  年金保険料を払う専業主婦―年金負担の不公平
  遺族年金を利用して一生楽に暮らす方法―遺族年金の矛盾
  孫の年金保険料を払う年金受給者―国民年金の矛盾
  高齢者の生活保障―拡大する高齢者の生活格差
  雲の上の少子化対策―夫婦とも正社員前提の育児休業
  十八歳で追い出される児童養護施設―若者の社会保障がない国
第2部 社会保障制度の構造改革
  ワーキングプア出現の意味―社会保障・福祉制度の前提の崩壊
  ワーキングプア増大の原因と意味
  ライフコースの不確実化
  社会保障・福祉制度の構造転換を目指して


筆者によると、今までの日本の社会保障は2つのコースを想定してくみ上げられてきた。
「サラリーマン+専業主婦」コース
「自営業」コースだ。

例えば、年金を見てみると、
「サラリーマン+専業主婦」コースの共済年金・厚生年金は退職後は労働しなくても十分な規模でもらえるし、収入のない専業主婦は支払いの義務はない。
逆に「自営業」コースの国民年金は、一生現役で労働することを想定しているので、月々の支払額は少ないが、もらえる額もお小遣い程度だ。
そのほかにも、待機児童が出るほど保育園が少ないのは、専業主婦になるための準備期間を補う例外的な利用しか想定していないためだし、最低賃金が生活保護より少ないのも、最低賃金は「専業主婦」か「自営業の中で手の空いている人」を対象にした、制度だからだ。

ところが、現在ではみんなが知っているように、このコースの枠組みが崩れてしまっている。
自営業・農業しか想定していない国民年金にはフリーターや派遣社員が加入することになり、最低賃金についてはそれで生活しなくてはならない人が現実に発生している。
厚生官僚の考える”普通”を外れた人には、社会保障がろくに提供されていないのだ。

みんなが知っていることなのだが、このことを整理してコトバにした筆者の目の付け所は確かに鋭い。
この人が人気になるのも十分に頷ける。

そして、その目の付け所から導かれる結論が
●ベーシックインカム又は給付付き税額控除による最低所得の保障
●”年金マイレージ”とふざけた名前を付けた確定拠出年金
と言う、なんのひねりもないありふれた提言しかされていないというオチがしっかりついているのも、また筆者らしい。

目新しい発見は少ないし、引用されている書籍も学者以外のものが多くあまり学術的ではない。
それでも、労働問題・貧困問題に興味がある人は目を通しておいた方がいい。
目の付け所は斬新だし、世間に響くアピールの仕方も学ぶことが出来る。

☆☆☆(☆三つ)

他のBlogの反応はこちら
(ポジティブな評価のエントリ)
http://otsu.seesaa.net/article/126208330.html
http://travel-life.at.webry.info/200909/article_3.html
http://www.kometoku.com/logs/kometoku/20090831.html#p01
http://mmaehara.blog56.fc2.com/blog-entry-1721.html
http://ch04001.kitaguni.tv/e1322995.html
意外と皆さん高評価。
やっぱり、こういう書き方・方向性で世間にアピールしていかないとダメなんですよねぇ……





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