専門家が論じる経済論戦:経済論戦の読み方 [経済]
私はちょっと前のエントリで「素人の理解するリフレ論」として、様々な経済学者の意見を元に、自分なりに経済学者の主張を整理してみた。
自分でも不完全なところは多いと思っているのだが……
ところが、同じような現在の経済学者の主張を専門家が整理したのが本書だ。
本職だけあってうまく整理されているし、そこから自分の説(リフレ)を説得的に展開している。
【目次】
はじめに エコノミストは役に立たないのか?
第1章 「実践マクロ経済学」のコア
日本経済を読み解く基本的な考え方
「流動性の罠」に陥った日本経済
第2章 経済論戦の見取り図―構造改革とマクロ経済政策
「構造改革主義」という幻想
「一九四〇年体制テーゼ」の呪縛
第3章 日本経済の「新しい局面」の見方
「失敗の枠組み」はいまだに健在
経済が回復する場合、失速する場合
第4章 日本の財政破綻はありうるのか
財政の維持可能性を考える
間違いだらけのハイパーインフレ論
第5章 ポピュリズムと不幸な構造改革
なぜ民営化が必要なのか
年金制度の本当の問題
本書は、リフレ派の筆者が様々なエコノミストが主張する経済論戦について、わかりやすく整理し、解説した一冊。リフレ派の立場から書かれているが、人格攻撃や全否定が行われているわけではなく、比較的誠実だと言えよう。
本書を読めば、それぞれの立場から、どこが相容れないのか・どこで違いが生じているかがよくわかる。
本書は2004年末の出版なので、当時の状況を思い出して読まないと若干違和感を感じるが、内容の偏りはひどくないし、難易度も中程度。
十分に楽しめる一冊である。
願わくば、サブプライムローン以降の現在の経済状況について語った続編を出して欲しいものだ。
中谷巌は「資本主義はなぜ自壊したのか 「日本」再生への提言」で転向しているし、ユニクロ型デフレを主張する浜矩子「ドル終焉 -グローバル恐慌は、ドルの最後の舞台となる!」の様な新手の破綻論者も出てきている。
今やれば、2004年時点の本書における評価の正しさも検証できるし、サブプライムローン危機に出てきた議論の整理も出来て面白いと思うのだが。
☆☆☆★(☆三つ半)
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悲しいことに、本書出版から5年以上が経過した今でもデフレ基調は変わっていない。
そういう意味では今でも十分に読む価値のある一冊だ。
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