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悪趣味で、どろどろしていて、読む人を引きずり込む:私の男 [小説]


私の男 (文春文庫)

私の男 (文春文庫)

  • 作者: 桜庭 一樹
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2010/04/09
  • メディア: 文庫



桜庭一樹の直木賞受賞作。
いや、こんなに悪趣味な本を読んだのは久しぶり。
ホントに悪趣味ですよ……。

【目次】
第1章 2008年6月 花と、ふるいカメラ
第2章 2005年11月 美朗と、ふるい死体
第3章 2000年7月 淳吾と、新しい死体
第4章 2000年1月 花と、あたらしいカメラ
第5章 1996年3月 小町と、凪
第6章 1993年7月 花と、嵐


父と娘であり、恋人でもある花と淳吾、二人の物語。
こう書くだけで、本書が悪趣味であることがわかると思う。
それでも、面白いのがまた何とも。

前作「赤朽葉家の伝説」で一山当てた筆者が、直木賞を狙って?執筆するとこうなりましたというような作品だろう。
センセーショナルで、どろどろしていて、遊びの部分は少なめ。
そんな仕上がりになっている。

非才な私がこんな紹介をすると、本書はダメな本に見えてしまうだろう。
ところが、そこは桜庭一樹。
嫌なテーマでもきっちり読ませる作品に仕上げている。
目次を見てもらうとわかるが、2008年からどんどんさかのぼっていくような記述になっており、これによって、冒頭に出てくる歪んだ親子のルーツをたどっていくことが出来る。
本書の登場人物は相当に歪んでいるので、その根本はすごく興味深く、読む人を引きつける。

こんなにどうしようもない壊れた人間の気持ち悪い物語を、きっちりと読ませる出来に仕上げてくる。
筆者の才能がよくわかる一冊である。
自分は道徳的であるとかたくなに信じている人以外なら、最後まで引き込まれて読み切ってしまうだろう。

☆☆☆★(☆三つ半)

他のBlogの反応はこちら
(本書をポジティブに評価するエントリ)
http://leelena.exblog.jp/13265444/
http://d.hatena.ne.jp/romshanp/20100511/1273591800
http://unmystery.blog13.fc2.com/blog-entry-2449.html
http://wraith-bookmaster.cocolog-nifty.com/blog/2010/05/post-75c6.html
http://d.hatena.ne.jp/urt13/20100510/p1
(本書をネガティブに評価するエントリ)
http://blog.goo.ne.jp/hi-lite2974/e/6bf38189e4e5d04d94e2958b65daae92?fm=rss

直木賞受賞作で知名度があるから、本書は早めに文庫化された。
でも、出来れば同時期に「赤朽葉家の伝説」を文庫化して横に並べて欲しかった。
赤朽葉家の伝説」の方が一般受けするはずだし。





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コメント 2

hi-lite

TBありがとうございます。
桜庭一樹氏の著書、私はこの「私の男」が最初だったので嫌な感じを受けてしまったのですが…
やはり、たまたまこういった題材だったからなんでしょうか?
「赤朽葉家の伝説」近々読んでみたいと思ってます。
by hi-lite (2010-05-21 08:51) 

book-sk

>hi-liteさん
コメントありがとうございます。

本書は一番きっつい部類じゃないかな……
他の作品にも、ちょっと歪んだ登場人物はよく出てきますが、ここまでは……

ちなみに、「赤朽葉家」はむしろ筆者の中で過度にまじめな部類の作品です。
by book-sk (2010-05-23 21:31) 

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