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歴史から見る現在の政治:インテリジェンス人間論 [社会]


インテリジェンス人間論

インテリジェンス人間論

  • 作者: 佐藤 優
  • 出版社/メーカー: 新潮社
  • 発売日: 2007/12
  • メディア: 単行本



雑誌「新潮45」の連載を中心に、書き下ろしなどを加えた佐藤優の短編集。
時代背景を合わせて読むと非常に興味深い一冊だ。
【目次】
鈴木宗男の哀しみ
橋本龍太郎と日露外交
私が見た「人間・橋本龍太郎」
小渕恵三の“招き猫”
新キングメイカー「森喜朗」秘話
死神プーチンの仮面を剥げ
プーチン後継争いに見る凄まじき「男の嫉妬」
日露対抗「権力と男の物語」
「異能の論客」蓑田胸喜の生涯
怪僧ラスプーチンとロシアン・セックス
スパイ・ゾルゲ「愛のかたち」
有末精三のサンドイッチ
「アジアの闇」トルクメニスタンの行方
インテリジェンスで読み解く「ボロニウム210」暗殺事件
不良少年「イエス・キリスト」
ニ十一世紀最大の発見「ユダの福音書」
ラスプーチン、南朝の里を訪ねる
ティりッヒ神学とアドルノ


本書は大きく分けて4つのテーマからなっている。
1.日本の政治家と官僚について
 「鈴木宗男の哀しみ」、「ラスプーチン、南朝の里を訪ねる」等
2.筆者がかかわったものを中心とした日露外交について
 「死神プーチンの仮面を剥げ」「日露対抗「権力と男の物語」」等
3.キリスト教について
 「ニ十一世紀最大の発見「ユダの福音書」」「ティりッヒ神学とアドルノ」等
4.過去のスパイ、思想家について
 「怪僧ラスプーチンとロシアン・セックス」「有末精三のサンドイッチ」等

人によって、どのジャンルに興味を持つかは異なるのだろうが、どの分野においても筆者の深い見識と体系的な知識に裏付けられた記述がなされており、どの部分も読み応えがある。
これほどの文章を書けるのなら、筆者が外務省で頭角を現すことが出来たのも頷ける。

個人的には、蓑田胸喜の物語が一番心を揺さぶられたし、考えさせられることがあった。
自らのルサンチマンから、同じ時代に生きる有名な学者に対して論争を挑み、論理では負けても時代の空気を背景に次々と論破していく。
しかし、無敵の論客となった後に敵がいなくなり、自分の生き甲斐を見失ってしまう。そして、自分の論理が軍国主義を後押しし、国家の敗北へとつながってしまう――。
こうした人物はこれからも出てきそうだし、我が国は同じ歴史を繰り返してしまいそうな危うさも秘めている。
その一点が私の心に残った理由なのだろう。

このように、一つ一つの短編それぞれが、何かを考えさせられる切り口と、それを支えるしっかりとした知識の土台を備えている。

――佐藤優は現在における屈指の論客であり、歴史家である。
それがよくわかる、読んで損のない一冊になっている。

☆☆☆☆(☆四つ)

他のBlogの反応はこちら
(本書をポジティブに評価するエントリ)
http://decchy.com/2008/01/post-7.html
http://d.hatena.ne.jp/caesarkazuhito/20080113/1200230646
http://d.karashi.org/20080418.html#p01
http://chogc.blog9.fc2.com/blog-entry-512.html
http://wodakahirokix.at.webry.info/200805/article_9.html
http://teabooks.seesaa.net/article/96328295.html
政治系の話が面白いというエントリがあれば、キリスト教の話が面白いというエントリもある。
筆者の幅の広さがよくわかる一冊である。





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