ニンテンドー3DSは失敗する?:トレードオフ―上質をとるか、手軽をとるか [経済]
商品・サービスが世に受け入れられるかどうかを判断する方法について述べている本書。
単純な視点だが、意外と応用性は広く、示唆にとんだ作品である。
【目次】
第1部 上質と手軽の天秤
上質か手軽か
取拾選択
不毛地帯と幻影
カメラ付き携帯の衝撃
第2部 勝者と敗者
上質の頂点
手軽の頂点
奈落
最悪の選択
第3部 二者択一の決断
イノベーション
破局
光明
戦略
あなた自身の強み
本書が書いている採用基準は一つ。
商品・サービスが世の中に受け入れられるためには、「飛び抜けて手軽」か「飛び抜けて上質」である必要がある。手軽でも上質でもない商品は失敗商品だし、手軽かつ上質を求めるのは幻影を追い求めるようなもので不可能だ。
この基本原則で、多くの商品・サービスについて説明がつくのである。
圧倒的な手軽さで王者に君臨するamazon。
圧倒的な上質さで多くの人を引きつけるiPhone、MacBook。
逆に、上質でも手軽でもないために売れ行きが伸びないキンドル。
上質で顧客を掴んでいながら手軽さも求めたがために失速したスターバックス。
これらの例が、単純な視点から詳細に解説されていて、非常に分かりやすい。
そして、本書の優れているところは、この視点から新商品の先行きを予測できるところだ。
このエントリのタイトルは若干の釣りが入っているが、それでも、本書から想像される結論の一つなのだ。
ニンテンドーDSは、15,000という手に入れやすい価格、簡単な操作性、携帯の利便性などからなる圧倒的な手軽さによって、PSPや据え置き型ゲームを上回る売れ行きを実現した。
ところが、ニンテンドー3DSは25,000円と高価な上に、3D映像という上質な体験を目指している。
ニンテンドーDSの手軽さは持っているものの、そこに上質性を加味しようとしており、本書で言うところの”幻影”を目指した商品に見える。本書の指摘が正しいなら、これは失敗することが宿命付けられた商品ということができるだろう。
もちろん、ゲーム機はハード単体で動くものではなく、ソフトウェアと合わせての商品なので、ソフトの魅力で売れ行きを勝ち取ることは可能なのだが……。
と、ゲーム機についての考察はともかく、上質と手軽という商品を判断する方法を手に入れることができる本書。ビジネスに携わる人なら、一読の価値はある。
☆☆☆☆(☆四つ)
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今の日本では、手軽がよく売れているようですが、上質にこだわる作戦ももちろんあり。
これから起業する人は、本書でよく考えるといい結果を得られるかもしれませんよ。
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