経済的左派からの提言:世界を救う処方箋: 「共感の経済学」が未来を創る [経済]
「貧困の終焉―2025年までに世界を変える」で最貧国における貧困との戦いを論じた筆者が、母国アメリカ合衆国について語ったのが本書。
世界地の超大国における国家の内部分裂という問題点をわかりやすく指摘している。
【目次】
第1部 大崩壊
アメリカの経済危機を診断する
失われた繁栄
自由市場についての誤った考え方
公共目的から手を引く政府
分裂した国家
新しいグローバリゼーション
八百長試合
注意散漫な社会
第2部 豊かさへの道
共感にみちた社会
豊かさをとりもどす
文明の対価
効率的な行政のための七つのルール
立ち上がるミレニアム世代
筆者が非難するのは、行き過ぎた小さな政府と公共心の衰え。
政府の役目を否定しすぎて、どんどん政府を小さくしていった結果、本当に必要な公共の役割までが削除され、米国民の生活が脅かされていることに対して改善提案をしている。
米国の問題は「ルポ 貧困大国アメリカ II」など、様々な書物で論じられているが、多くの本ではその最終原因を貧富の差から生じるものだとしている。
貧富の差が問題だという点については、本書も同意しているが、本書は更に深く、米国民の公共心が衰えた結果、政府がどんどん小さくなり、必要な支出が削られたことが貧富の差を巻き起こし、様々な問題につながっているとしている。
言わば、本書は左派からの警告になるのだが、リバタリアンを支持する私が読んでも、一定の説得力を持つ。
財政が厳しく経済も芳しくない日本では、橋下徹のように、政府の役割を小さくしていく政治家が人気を得る局面が多くなるだろう。
そうした日本に住む人だからこそ、本書のようにまっとうな小さな政府批判を見ておくことは有益だろう。
☆☆☆★(☆3つ半)
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本書で印象的だったのは、所謂リボルビング・ドア批判。
私が日本の役所と仕事をしていたときは、日本の役人は民間経験がないから非現実的な空論が多く、専門人材が育たないと批判されることがあった。
だが、民間と官僚を行き来する米国では、別の問題があった。
どんな制度でもいい面と悪い面があるのは当然だが、制度をうまく運用することの難しさが印象に残る。
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