振り返ればすぐ昨日のことのように:日本の失われた20年 デフレを超える経済政策に向けて [経済]
タイトルの通り、日本経済の失われた20年を振り返り、現在必要な経済政策を提言する内容。
本書の分析によると、日本経済の低迷はまだまだ続くことになる。
【目次】
序 章 「過度の恐怖」は乗り越えられたのか
1 二人のエコノミストの視点
2 経済政策の実現過程
3 本書のアウトライン――「望ましい経済政策」への接近
第1章 世界金融危機
1 「バブルの温床」としての世界経済の好況
2 住宅価格の上昇はなぜ生じたのか
3 サブプライム住宅ローン危機から世界金融危機へ
4 世界金融危機の経験から何を学ぶべきか
第2章 日本経済の現状
1 日本経済の景気後退の過程
2 基礎的指標に基づく日本経済の特徴
3 需要側からみた「長期停滞」と二〇〇二年以降の回復局面
4 供給側から見た「長期停滞」と二〇〇二年以降の回復局面
5 長期停滞の原因――需要側か供給側か、実物的現象か貨幣的現象か
第3章 デフレはなぜ生じ、なぜ終わらないのか
1 インフレ・デフレと物価統計の関係
2 なぜデフレは生じたのか
3 なぜマネーストックは増えなかったのか
4 原材料価格高騰が物価に与える影響
5 雇用面から見たデフレの解釈
6 デフレはなぜ生じ、なぜ終わらないのか
第4章 一九九〇年代以降の財政・金融政策と長期停滞
1 経済情勢の誤認
2 一九九〇年代の財政政策
3 一九九〇年代の金融政策
4 「構造改革主義」の台頭
5 上げ潮派・財政タカ派・財政出動派・純粋構造改革派の経済学
第5章 世界同時不況下の財政・金融政策
1 麻生政権の経済対策
2 日銀の金融政策をどう評価するか
3 鳩山政権の経済政策には何が必要なのか
終 章 経済政策はどこに向かうのか
1 政策形成の枠組みの「改革」の必要性
2 「信頼」と「人間重視」の経済政策を
3 市場メカニズムの視点から見た経済政策の位置づけ
あとがき
参考文献
本書は日本経済のバブル崩壊以降の失われた20年を振り返ったアカデミックな内容である。
そして、本書を通じて見えてくるのは、日本の政治が経済に関する選択をことごとく誤ってきた歴史でもある。
おおまかに言うと、バブル崩壊以降の自民党政権は効果のない財政政策を行うか、デフレ脱却には役に立たない構造改革をあたかも経済政策のように信じこませて実行するかのいずれかであった。
小泉純一郎は「構造改革」によって経済成長を図るという過ちを犯したが、円安誘導を行なってきたので少しはマシだった。
それに続く安倍・福田の政権は「構造改革」で経済成長を目指すという間違えた政策のみを受け継いだため、デフレ脱却は出来なかった。
政権交代前の麻生政権は、効果の薄い財政政策を行うのみで、金融政策が伴わなかったので借金を増やすだけに終わった。
そして民主党政権を通じた最終的な(財政面における)政治的勝者は与謝野馨。
これではデフレ脱却がなるはずもない。
本書を読んで、バブル崩壊以降の失われた20年を振り返ると、様々なデフレ脱却のチャンスがあったことがよく分かる。
だが、日本の政治・国民はことごとくそのチャンスを棒に振ってきた。
これがスポーツなら、完全に勝利の女神に見放される流れだ。
だが、日本経済は幸運なことにまだ体力を残しており、デフレ脱却のチャンスは再度訪れるだろう。
その時にどのような政策を是とするべきか?
新聞を信じて間違った政策を賞賛しないために、今こそ本書で失われた20年を振り返ってみるいい機会だろう。
☆☆☆☆(☆4つ)
他のBlogの反応はこちら。
http://d.hatena.ne.jp/kumakuma1967/20100526/p1
http://economist.cocolog-nifty.com/blog/2010/03/20-8b9c.html
http://d.hatena.ne.jp/takeboruta/20100810/1281417487
増税できれば景気なんて関係ない。と考えている野田政権が終わりそうなのは良いけれど、対抗馬となる自民党も十年一日のようにケインズ政策による国土強靱化……。
どっちもダメな経済政策の見本で、デフレ脱却は遠そうです。
コメント 0