ロールズ 政治哲学史講義 I&Ⅱ:政治哲学を本格的にやりたい人のガイドブック [哲学]
ジョン・ロールズがハーヴァード大学で30年余にわたって練り上げた講義録。
ハーバードの講義が元ネタとなっていても、一般向けに手が多く入っている「これからの「正義」の話をしよう」とは異なり、講義録そのものなので、かなり歯ごたえがある。
その分、内容は深く、得るものも多いのだが……。
【目次】
【Ⅰ】
序論―政治哲学についての見解
ホッブズ(ホッブズの世俗的道徳主義と社会契約の役割、人間性と自然状態、実践的推論についてのホッブズの説明、主権者の役割と権力)
ロック(ロックの自然法の教義、正統な体制に関するロックの解釈、所有権と階級国家)
ヒューム(「原初契約について」、効用・正義・そして賢明な観察者)
ルソー(社会契約―その問題、社会契約―諸仮定と一般意志(一)、一般意志(二)と安定性の問題)
【Ⅱ】
ミル(ミルの効用の考え方、正義についてのミルの説明、自由原理、全体として見たミルの教義)
マルクス(社会システムとしての資本主義に関するマルクスの見解、権利と正義についてのマルクスの構想、マルクスの理想―自由に連合した生産者たちの社会)
補遺
ヘンリー・シジウィック四講
ジョゼフ・バトラー五講
目次を見てもらえればわかるように、ジョン・ロールズが講義で取り上げた政治哲学上の巨人たちに関する講義が並ぶ。
「これからの「正義」の話をしよう」のマイケル・サンデルと比べると、カントout、マルクスinといったメンバーだ。
大筋は同じだが、この細かな違いはどういった思想から来ているのか若干気になるところではある。
個別の講義については、ここで書くと恥をかく程度にしか理解できていないと思われるので省略させて欲しい。ただ、理解度に差はあれど、本書を読みながら現在の政治を眺めて考えたことは一つや2つではないし、新聞・雑誌では得られない(自分なりに)深い考えができたことは間違いない。
時間・値段に応じた価値はあると断言できる。
なお、取り上げられている内容は非常に興味深く、楽しむことのできるものだが、原典を読んでいることを前提とした講義なので、本書だけを読んでいくのは若干骨が折れる。
本書を読むのなら、脇に指定された原典を置くか、最悪でもPC検索で補足する環境は必要だろう。
このように、非常に骨太で役に立つ本書なので、学生さんのように時間のある人はじっくり取り組むことをおすすめする。本書にかけた労力は無駄になることはないだろう。
☆☆☆☆(☆4つ)
他のBlogの反応はこちら。
http://thomas-aquinas.cocolog-nifty.com/blog/2011/11/20111120-d1fc.html
大作だけに、エントリは少なめ。
しっかり取り組めば、間違い無く面白いのだが・・・
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