政治の道具としての経済:資本主義が嫌いな人のための経済学 [経済]
右派・左派の両方が勘違いする経済理論についての誤りを指摘した一冊。
右派・左派の両方に対して批判しているのが面白い。
【目次】
第1章 資本主義は自然――なぜ市場は実際には政府に依存しているか
第2章 インセンティブは重要だ……そうでないとき以外は
第3章 摩擦のない平面の誤謬――なぜ競争が激しいほどよいとは限らないのか?
第4章 税は高すぎる――消費者としての政府という神話
第5章 すべてにおいて競争力がない――なぜ国際競争力は重要ではないのか
第6章 自己責任――右派はどのようにモラルハザードを誤解しているか
第7章 公正価格という誤謬――価格操作の誘惑と、なぜその誘惑に抗うべきか
第8章 「サイコパス的」利潤追求――なぜ金儲けはそう悪くないことなのか
第9章 資本主義は消えゆく運命――なぜ「体制」は崩壊しなさそうなのか(しそうに見えるのに)
第10章 同一賃金――なぜあらゆる面で残念な仕事がなくてはいけないのか
第11章 富の共有――なぜ資本主義はごく少数の資本家しか生みださないか
第12章 レベリング・ダウン――平等の誤った促進法
筆者が指摘するように、右派・左派ともに、経済的な主張に対しては歪んでいるところがあり、胡散臭い理論が世の中にははびこっている。
例えば、「国際競争力が最も重要である」とか、「消費税便乗値上げはやめるべきである」とか。
このあたりのツッコミどころは、本書を読めばよくわかるし、それぞれのパートで納得しながら読み進めることができる。
でも、なぜそんなに歪んだ理論が真剣に主張されるのだろうか?
それはおそらく、政治的な対立が深まっているからだろう。
相手の政治的立場が気に食わないという前提で経済的な主張がなされるから、理論的には怪しげでも、政治的な立場を考えたら賛成せざるを得ない。そんな状況が先進国では常態化している。
更に、日本では右派・左派を分けるものは外交であって、経済ではない。
そうした背景もあって、カナダ・米国をイメージして書かれた本書が、日本どっぷりの私にもストンと頭の中に落ちてきている。
政治的な対立が深まり、右派でも学生時代にはマルクスを学んでいた時代とは異なり、対立する派閥の主張する経済理論を学ぶことが少なくなってきている。
そんな今だからこそ、本書で政治的な経済理論をおさらいしておくのは面白い。
☆☆☆☆(☆4つ)
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経済学は化学や数学と違い、正しいものが勝利する学問ではなく、政治的に支持を集められる理論が実現化される学問だ。
だからこそ、意味不明な党派対立が起こりうるのだが、それでも真実への追求をやめてよいものではない。
政治的な立場と経済学という観点から考えたいなら、本書は非常に役に立つ。
2012-09-23 22:06
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