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安全保障からみるサイバーセキュリティ:サイバー・テロ 日米vs.中国 [社会]


サイバー・テロ 日米vs.中国 (文春新書)

サイバー・テロ 日米vs.中国 (文春新書)

  • 作者: 土屋 大洋
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2012/09/20
  • メディア: 新書



おそらく筆者がつけていないであろうタイトル以外は非常にまっとうな一冊。
今まで、日本での情報セキュリティは、通信事業者・サーバ運営者・インターネットビジネス関係者・総務省・経済産業省など、ビジネス側から語られることが大半であった。

だが、本書は安全保障の観点から情報セキュリティを語っている
そうした意味で今までにはあまりない切り口を持った本だと言える。
【目次】 序章 雲の中の攻撃者
第1章 未来の戦争としてのサイバー攻撃
第2章 アメリカにおけるサイバーセキュリティ
第3章 中国におけるサイバーセキュリティ
第4章 地球規模のサイバー防衛
第5章 民兵と傭兵の時代
第6章 日本のサイバーセキュリティとインテリジェンス機関
第7章 サイバー攻撃シミュレーション


本書の内容は、第2章で米国・第3章で中国のサイバーセキュリティを論じた上で、後半では日本政府の情報セキュリティに対して取り組む体勢を語っている。

タイトルでは米国と日本が組んで中国とサイバー戦争を行なっているように読めるが、それは煽り。
Googleの中国からの撤退問題などもあるが、正面衝突しているわけではない。
筆者は政治学者の眼で両国のサイバーセキュリティへの取り組みを非常にわかりやすく解説してくれている。

その後に語られる日本の取組みは、より詳細に書かれているし、問題点の指摘も明確だ。
日本はサイバー攻撃に対してどのように対策を取っているのか?どの部署が主管となっているのか?日本におけるサイバー防衛軍の実力は?
こうした疑問は本書を読めば大体分かるようになっている。

ちなみに、日本の大きな問題は筆者も明確に指摘している人材(セキュリティに明るい官僚が居ない・採用できない)という問題と、緊急時にどのような体勢で対応するかが決まっていないという問題だ。
具体的に言うと、北朝鮮からミサイルが打ち込まれた場合はどのような体勢が構築され、どう対処するかは比較的明確に決まっているが、どこかの国から持ち込まれたウイルスで東証が取引不能になった場合どの部署が対処するかは明確で無い

全体的にはよくできていて、米国・中国のセキュリティへの取り組みの概要と、日本における取り組み体勢・問題点がよく分かる一冊。
政府の情報セキュリティ政策会議の委員として活動しているインサイダーなだけに、情報も正確で興味深い
個人的には筆者がロシアやEUの取り組みにも詳しいことを知っているので、そこのあたりの情報も述べられていればなお良かったと思えるが、今のままでも新書としては十分な内容・分量。

動きの早い分野だけに、鮮度が落ちないうちに読んで欲しい。

☆☆☆☆(☆4つ)

他のBlogの反応はこちら。
http://neto.blog10.fc2.com/blog-entry-9027.html
http://blogs.yahoo.co.jp/zenkichi6636/39436620.html
ご本人のBlog
http://d.hatena.ne.jp/taiyosfc/20120913/1347534144

新しいのと、ニッチジャンルのせいで、エントリはやや少なめ。
いい本なので、生きのいいうちに多くの人に読まれて欲しいのだが・・・






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コメント 1

土屋大洋

ご紹介くださり、ありがとうございます。トラックバックが飛んできて拝見しました。タイトルについてはお察しの通りです。
by 土屋大洋 (2012-11-28 23:08) 

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