マイクロファイナンスの限界もわかる:最底辺のポートフォリオ ――1日2ドルで暮らすということ [社会]
バングラディシュ、インド、南アフリカの一日2ドル前後で暮らす人々の金融取引を、一定期間にわたって記録したデータを元に世界の最底辺生活者に対する金融サービスを考えた本。
一日2ドル未満の生活をしている人にお金を貸す人なんて居ないと思うでしょ。
でも、そうした人は借金や貯金を頻繁に行なっていて、稼いだ分をその日に使い切る江戸時代の江戸っ子のような生活をしている人は殆ど居ないのが真実なのだ。
【目次】
第1章 貧困者のポートフォリオ
第2章 骨の折れる日々
第3章 リスクに対処する
第4章 こつこつと積み上げる――まとまった資金を作る方法
第5章 お金の値段
第6章 マイクロファイナンス再考――グラミン II ダイアリー
第7章 よりよいポートフォリオへ
付録1 ポートフォリオの裏話
付録2 ポートフォリオ抜粋
まず、本書でスゴイのは、付録。
各国での調査データから最底辺の生活をしている家族の実態が一つ一つ浮かんでくる。
怪我が元で職業と資産を失い借金まみれになってしまったもの、一日2ドル未満の収入をやりくりして資産をおおきく増やしたもの、借金をして商売を拡大させたもの、金利で資産が減少して言っているもの……。
「最底辺の10億人 最も貧しい国々のために本当になすべきことは何か?」や「アフリカ 苦悩する大陸」といった本を読むと、貧困国に暮らす人は稼いだお金をそのまま生活維持に使っているような印象を受ける。
だが、実際はもっと複雑で、悩み深い。
最底辺の生活をしている人は、収入が安定していない。零細農家だったり、小規模自営業だったり、非正規雇用だったりして、収入には波が大きい。
彼・彼女らは、そうした収入の波を乗り越えて毎日の食事を確保し、あわよくば資産(ゴールドの装飾品だったり、土地だったり)を築きあげようと様々な金融サービスを活用している。
近所の人や地元の商店といった人からお金を借りるといったインフォーマルな金融から、社会起業で一躍有名になったマイクロファイナンスのようなフォーマルな金融までありとあらゆるサービスを。
ただ、彼・彼女らにぴったりと合った金融サービスはなく、それが故に課題も残っている。
例えば、預金。
日本でもそうだが預金を続けるのは難しいので、収入があった場合に天引きして貯金をすることがお金を貯めるには最も良い方法だ(そして、引き出すのが適度に難しいとなお良い)。
ところが、定期的に収入が銀行口座に振り込まれるサラリーマンとは違って、収入に波のある人から天引きで資産を形成してくれる銀行はない。
集金&貯金を行うインフォーマルなサービスはあるが、金利はつかないどころか手数料までかかる。
そうしたサービスが利用されるのは、ピッタリのサービスがないゆえの苦肉の策でもある。
本書が描く、最底辺の人々が金融サービスを使いこなす姿と、彼らの金融に対する悩みは非常に興味深い。
最底辺の人々は少ない金額を稼ぎ、それを使って食いつないでいるだけだと思ってるならば、是非本書を読んでみて欲しい。
一日2ドルの生活と、彼らの金融に対するニーズが非常によく分かるはずだ。
☆☆☆☆(☆4つ)
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意外とエントリは多い。
そして、評判もいいようだ。
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