性格は変えられる。だが、幸せになれるのだろうか……。:心をあやつる男たち [自己啓発]
洗脳系自己啓発セミナの歴史を描いた傑作。
高度成長期のST(Sensitivity Training)・エンカウンターと言った能力開発のための洗脳セミナーを経て、バブル期の所謂洗脳系自己啓発セミナ、その後の新興宗教へと続く流れを非常に上手くまとめている。
【目次】
第1章 山麓の孤島
第2章 大地震
第3章 チェンジ体験
第4章 転落した「教祖」
第5章 鼠の花束
第6章 南病棟
他人とうまくやりたい、もっと自信を持ちたい、自分の中にはまだ発揮されていない才能が有るはず。
こういった願望を持っている人は多いだろう。
そして、そうした願望につけこんでお金儲けや奴隷づくりをしようと企む悪人もまた、数多い。
本書で主に取り上げられているのは根っからの悪人ではないが、他人の人格を改造するセミナーを生きがいと定め、それに一生を費やした男。
人格改造の効果はてきめんで、うまい方向に転がれば、うつ気味でろくに外出も出来なかった人が活動的に動けるようになったり、他人の気持ちのわからなかったやり手ビジネスマンが部下の心にも配慮できる完璧な人間になったりする。それが故に、主人公は一生の仕事としてセミナを選んだのだろう。
反面、過酷なセミナなのでうまくいかない場合は自殺したり、躁うつ病を発症したりしてしまう。
本書では、人格改造セミナに関わった人間は受講者であれ、講師であれ、その効果がすごいゆえにその後の人生が狂っていく様子が非常によく分かる。
初期のセミナに比べれば、バブル期に問題となった自己啓発セミナなどは促成栽培の子供だましだ。
人間であるがゆえに悩みは尽きないし、自分の性格に嫌なところの一つや二つはあって当然。
どうしても自分の性格に我慢ができない人は人格改造系のセミナや宗教にすがることを考えるのだろうが、その前にぜひとも本書を読んで欲しい。
自分の意志で強烈に人格を変えようとすることの意味と副作用がはっきりと理解できる。
☆☆☆☆★(☆4つ半)
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