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投資の常識は学問的に正しいとは限らない:確率・統計でわかる「金融リスク」のからくり (ブルーバックス) [経済]


確率・統計でわかる「金融リスク」のからくり (ブルーバックス)

確率・統計でわかる「金融リスク」のからくり (ブルーバックス)

  • 作者: 吉本 佳生
  • 出版社/メーカー: 講談社
  • 発売日: 2012/08/21
  • メディア: 新書



短期投資よりも長期投資のほうがリスクが高い
と言った、投資の中級者が勘違いしやすいポイントを、簡単なモデル化によって示してくれる一冊。
危険な金融商品の解説に定評がある吉本佳生が、理系中高生御用達のブルーバックスで書いただけあって、数学が好きな人にも投資をやっている人にも有用な一冊だ。
【目次】
はじめに 金融リスクとは?
第1章 金融リスクを確率的に考える理由
第2章 短期投資のリスクシミュレーション
――デイトレードをするなら,外貨か,株か? 第3章 リスクとリターンの基本関係
第4章 現実のリスクとリターンの正体
第5章 中長期運用のリスクシミュレーション
第6章 精度を高めた中長期のリスクシミュレーション
おわりに リターンよりリスクが大切


本書の構成は、①簡単な金融商品の値動きのモデル化を解説、②過去のデータの調べ方を解説、③シミュレーションによって金融業界の常識、ウリ文句の嘘を暴くという構成。

例えば、冒頭に出した「長期投資は短期投資より高リスク」というもの。
ウォール街のランダム・ウォーカー」や「敗者のゲーム」と言った資産形成の名著に喧嘩を売っているようだが、理論的には非常に正しい。

運用期間が長期になるに従って、資産の値動きの幅は拡大するのでリスクが非常に高くなる。
詳細は本書を読めばわかるが、「コインを投げて表が出れば50%up・裏が出れば50%down」の簡単なモデルを考えた場合、試行回数が1回だと50%~150%の間に入るのに対して、試行回数が2回になれば25%~225%と値動きの幅は拡大してしまう。

こんな簡単なシミュレーションでもわかるのに、投資の世界では「長期投資は短期投資よりも安全」といったウリ文句が蔓延している。筆者が本書で言いたいのは、投資の世界の常識を鵜呑みにせずに、きちんと自分のアタマで考えてみようということだろう。

このように、投資をやっている人にも有用だし、学校で習っている数学が実社会でどのように役立つかわからない高校生にも有用。毛色の違う投資本として楽しめる一冊だ。

☆☆☆☆(星4つ)

ちなみに、「長期投資が安全」と言われるのは、「(同じ収入の人が)1億円と言った目標を貯めるには長期投資のほうが安全」というのが省略されたものだと考える。
貯金100万円・年収400万円の人が1,000万円を作ろうとした場合、1週間で作ろうとするなら貯金の100万円にFXで200倍程度のレバレッジを掛けてトレードを繰り返すしか無い。だが、50年先に1,000万円を作ればいいのなら、元金100万円だけの運用なら4.7%程度の利率を達成できればいいので通常のレバレッジのない外貨投資で十分だ。
こうした事象を捉えて、長期投資のほうが安全と言われるのだろう。

他のBlogの反応はこちら。
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