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幸福研究の限界を示すものかも:幸福の経済学―人々を豊かにするものは何か [経済]


幸福の経済学―人々を豊かにするものは何か

幸福の経済学―人々を豊かにするものは何か

  • 作者: キャロル・グラハム
  • 出版社/メーカー: 日本経済新聞出版社
  • 発売日: 2013/02/26
  • メディア: 単行本



経済学の論文や政府系報告書の前文のような一冊。
なぜ幸福を経済学観点から調査・測定することが大事なのか?そうした研究の意義は?ということが手厚く書かれている。反面、研究結果自体はほとんど解説されていないので、肝心の中身が薄く、肩透かしを食らったような印象を受けた。


【目次】
第1章 幸福―新たな経済学(用語の使い方について、幸福の経済学のアプローチ ほか)
第2章 幸福とは何か―行為者性と厚生の理論(アリストテレス対ベンサム、経験された厚生と期待される厚生 ほか)
第3章 世界各国の幸福―何がわかっているか(中南米、ロシアとOECD諸国との比較、移行経済における幸福―中央アジア、キューバ、東ヨーロッパの場合 ほか)
第4章 適応理論とその他のパズル(不幸な成長、不満な成功者、より不幸な危機、幸せな農民と不満な成功者 ほか)
第5章 GNHかGNPか?(幸福の指標が教えてくれるもの―私たちが学んできたもの、「幸せな農民と不満な成功者」再び ほか)


最終章にGNHかGNPか?というタイトルが付けられているが、このタイトルを目新しく感じる人になら本書を読む意味が十分に存在する。逆に、このエントリで取り上げた「幸福の研究―ハーバード元学長が教える幸福な社会」など、類書が多くある分野でもあるので、既にそうした本を読んだ人からすれば本書から得られるものは少ないだろう。

本書が力点をおいているのは、なぜ経済学は「幸福」を考えるようになったのか?ということ。
従来の経済学では効用を金額に置き換えて評価をしていたのだが、金額以外の評価方法が有るのではないか?という疑問が出発点だ。この辺りの背景が本書には詳しいのだが、既にこの議論に触れたことのある人は、幸福研究・調査をした結果の新しい発見を求めるだろう。残念ながら本書にはめぼしい結果が少ない。

議論の取っ掛かりとして読むのなら悪くはないが、研究成果から何かを読み取りたい人には正直あまり向いていない。2013年出版にしてはやや残念な一冊だ。
(本職の研究者だと別の読み方が有るのかもしれないが……)

☆☆★(☆2つ半)
http://d.hatena.ne.jp/ujikenorio/20130828/p2






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