SSブログ

アッパーミドルをターゲットにした国へ:俺のイタリアン、俺のフレンチ―ぶっちぎりで勝つ競争優位性のつくり方 [経済]


俺のイタリアン、俺のフレンチ―ぶっちぎりで勝つ競争優位性のつくり方

俺のイタリアン、俺のフレンチ―ぶっちぎりで勝つ競争優位性のつくり方

  • 作者: 坂本 孝
  • 出版社/メーカー: 商業界
  • 発売日: 2013/04/03
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



Chikiriの日記で紹介されていたので手にとって見た一冊。
既に功成り名遂げた筆者が還暦を超えてまで未経験の分野で起業する情熱、日本で有数の一流の料理人が一流店をやめて立ち飲みの「俺のイタリアン・俺のフレンチ」に入店する理由、筆者が語る今後の飲食店のあり方……。どれもが素晴らしく、興味深い内容だった。

その中で私が一番興味を持てたのは、一流の料理人がグランメゾンを辞して俺のイタリアンに入店する理由。中身はここでは触れないが(ちなみに、事前に考えていた内容とぜんぜん違う)、重要なのは一流のプレーヤーがグランメゾンや高級ホテルよりも立ち飲みの「俺のイタリアン」の方が先行きが明るいと思っているところ(そうじゃなかったら多くの人が転職してくることはない)。
これは、大袈裟に言うと日本の未来を予言する重要な証言だと思う。
【目次】
第1章 空前の繁盛店、「俺のイタリアン」誕生
・立ち飲み居酒屋と、星付きレストランに着眼
・フード原価率88%でも赤字にならない業態
・現場からビジネスモデルを組み立てていく
・「20坪」「1階」、大商圏の立地を求める
・「おいしいこと」「親しみやすいこと」を追求する
・16坪で月商1910万円を達成する
・狭い厨房ならではの課題を解決して、ノウハウにしていった
・知恵を絞り工夫ができる人材が揃っている
・料理人が抱える不満が、ビジネスモデルにつながった
・総料理長の能勢和秀さん、島田博司さんが入社を決意した瞬間
・「俺のイタリアン」「俺のフレンチ」は「売る姿勢」をつくる
・店は劇場、裁量権を持った料理人はアーティスト
・出自の異なる三人の経営陣でバランスを保つ
・料理を組み立てるプロ、戦略を組み立てるプロ
・パワーアップしていくコストパフォーマンスの「安田理論」
・銀座8丁目に集中出店する理由

第2章 2勝10敗の事業家人生
・最初の家業で倒産の危機と、事業再生を経験
・官僚化した会社組織から、独立を決意
・独立して最初の事業、「オーディオ販売」で大敗する
・中古ピアノの販売で初勝利、古本ビジネスのヒントにつながる

第3章 ブックオフがNo.1企業になれた理由
・古本流通に新しい価値基準をつくる
・フランチャイズで「世直し」「世助け」に目覚める
・「利他の心」が競争優位性をもたらした
・人の成長を重視した経営が評価される
・急成長とともに受けた誹謗中傷を乗り越える

第4章 稲盛和夫氏の教えと、私の学び
・稲盛氏との出会いで「利他の心」を学ぶ
・稲盛氏に叱られた、盛和塾塾生としての誇り
・稲盛フィロソフィに触れて経営に迷いがなくなる
・「経営12カ条」と「六つの精進」

第5章「俺のイタリアン」「俺のフレンチ」は進化する
・次の「競争優位性」はジャズライブとのコラボ
・競争優位性は、道楽に見える挑戦の産物
・「銀座にはジャズと柳がよく似合う」という街にする
・「俺のイタリアン」「俺のフレンチ」の和食版「俺の割烹」を展開
・更に、最強の数字を追求する「俺のやきとり」

第6章「物心両面の幸福を追求する」決意表明
・「人生を懸けて飲食業に革命を起こす」決意の数々
・新宅明男(執行役員ソムリエ長)
忙しく仕事ができる、この環境に日々感謝
・山浦敏宏(俺のイタリアンJAZZ料理長兼俺のイタリアン取締役総料理長)
人を育てていく環境を充実させていく
・松村幸祐(「俺のイタリアンJAZZ銀座コリドー」ソムリエ
気持ちが一つになって数字が伸び、それでさらに強くなる
・島田博司(取締役総料理長)
おごることなく、安心せず、あぐらをかかず
・岡本英嗣(「銀座おかもと」料理長)
いただいた二ツ星の一つは会社の星、もう一つは自分の星
・橋本健太郎(執行役員「俺のイタリアンJAZZ銀座コリドー」支配人)
仲間のために汗をかいて圧勝する
・同じ目標を共有する力強い一体感
・臼田雅敬(「俺のやきとり」焼き師)
再びチャンスを与えてくれた坂本社長に感謝!
・藤井大樹(執行役員「俺のイタリアン新橋本店」シェフ)
お互いに切磋琢磨していきたい
・遠藤雄二(執行役員「俺のフレンチKAGURAZAKA」シェフ)
新業態はこだわりの料理人の新しい舞台
・能勢和秀(俺のフレンチGINZA料理長兼俺のフレンチ取締役総料理長)
手間暇を惜しまない技術を存分に発揮してほしい
・高坂進(執行役員「俺のフレンチGINZA」店長)
この会社の強みは、団結力、理念の共有
・森野忠則(常務取締役)
今が大変であればこそ将来の蓄積となる
・安田道男(常務取締役)
徹底した意思の疎通、完璧なチームワークで難局を乗り切る
われわれは料理や経営の世界を席巻する集団
・会社が利益を上げて、社員に分配する仕組みをつくる

第7章 業界トップとなり、革新し続ける
・株式公開に向かって動き出す
・「カイゼン」を毎日継続して、競争優位性を増やしていく
・社員の成長と共に事業構想が膨らんでいく
・フランチャイズで飲食業の基盤を強くする
・飲食業界に常に革新をもたらす存在を目指す


多くの一流プレーヤーが立ち飲みの「俺のイタリアン」で働くことに、グランメゾンで働くこと以上の価値を見出しているということは、プロの目が確かなものである異常、今後も「俺のイタリアン・俺のフレンチ」の快進撃は(ある程度)続くのだろう。
坂本社長は銀座への集中出店を本書の中でも宣言しているので、銀座で一番勢いのある店の一つが「俺の」チェーンになる日はそう遠くないはず。

こうなると、Amazonによくいる”他人にケチをつけることが生きがいの人”は「銀座の品格を落とす」とか、「高級店が立ち飲みに駆逐されるのは悲しい」と言った文句を垂れるのだろう(実際、そうしたAmazonの書評は多い)。だけど、心の屈折した人がどんなに文句を言っても市場が支持している以上、流れを押しとどめることはできない

では、行き着くところまで行ったら、銀座(と言うか、東京のそこそこ良い立地)の飲食業界はどうなるのだろうか?この流れが正しければ、小数の高級店(従来型のグランメゾン等)を残しつつ基本的には数多くのコストパフォーマンスの良い店がメインになるのだろう。つまり、東京のメインストリームは富裕層ではなく、アッパーミドルになっていくはずだ。

その結果は、世界における日本の特徴を明確にしてくるかもしれない。
産油国の大富豪が来ることは無いけれど、先進国でそこそこの給与をもらっている夫婦が訪れるのには最適な国として。そういう未来は悪くないように思える。

飲食業界の抱える問題、企業家の情熱、ビジネスモデルの立案など、学ぶことも多い本書。それらを通じて日本の将来まで考えられる素晴らしい一冊だ。

☆☆☆☆★(☆4つ半)

ちなみに、そんな素晴らしい本書を読んでも私が「俺のフレンチ・俺のイタリアン」に行くことは(よっぽど興味のある人に誘われなければ)無いだろう。下戸なので立ち飲みスタイルは辛いのだ。
酒よりも飯がススム中華料理の「俺の中華」があればぜひとも予約してみたいと思うのだが……。

他のBlogの反応はこちら。
http://d.hatena.ne.jp/Chikirin/20131208
http://d.hatena.ne.jp/fujipon/20131225
http://simple-nero.blog.so-net.ne.jp/2014-02-08
http://ranalytics.blog.fc2.com/blog-entry-55.html
http://kujipat.sblo.jp/article/84389012.html
http://d.hatena.ne.jp/nakorake/20131222/1387698266






nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:

nice! 1

コメント 0

コメントを書く

お名前:[必須]
URL:
コメント:
画像認証:
下の画像に表示されている文字を入力してください。

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。