失敗した戦争ビジネス:日露戦争、資金調達の戦い: 高橋是清と欧米バンカーたち [歴史]
日露戦争、資金調達の戦い: 高橋是清と欧米バンカーたち (新潮選書)
- 作者: 板谷 敏彦
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2012/02/24
- メディア: 単行本
日露戦争の物語では「坂の上の雲」が圧倒的に有名だ。
確か、「坂の上の雲」では奉天で日本軍がロシア陸軍に勝った後進撃が止まったのは兵員・弾薬の補給が止まったからであり、ポーツマス条約の締結に至ったのはロシアで革命気運が高まったからだというトーンだった。
だが、本書が語る真実は違う。
日本陸軍が奉天での大勝後に押し込めなかった理由も、ロシアが講話に応じた理由もその大半はカネの問題なのだ。
【目次】
第1章 高橋是清と深井英五
第2章 二〇世紀初頭の金融環境
第3章 日露開戦
第4章 高橋の手帳から見る外債募集談
第5章 戦況と証券価格
第6章 戦後と南満洲鉄道
エピローグ 日露戦争のその後
高橋是清が米国でユダヤ系資本から資金調達を行って日露戦争を戦ったのは有名な話。
日本では、ロシアがユダヤ人を迫害していたため、ユダヤ資本が日本へ肩入れしていたというトーンで語られることが多い。
だが、実態は本書で書かれているように、日本への投資は純然たるビジネスとして実施されていたのであり、決して支援という色合いが強い資金ではない。
そうしたビジネスとしての戦争におけるIR担当者が高橋是清で、Visit Japanキャンペーンすらロクに浸透させることのできない今の日本からは考えられないぐらい有力資本家へのアピールが素晴らしい。
日本政府が必要とする金額と国際社会が投資できる利率・担保などをうまく折り合いをつけて、必要な金額を調達する腕前は、現在の企業社会でも十分通用するものだ。
ただ、金銭的な面での活躍をしたこともあり、高橋是清の人生は日本国民から誤解を受け続ける人生なのだが、本書で語られる日露戦争の頃から国民には活躍が十分に理解されていないことが見受けられる。
彼の活躍に見合った賞賛を得られない人生が垣間見えるようで、やや物悲しい面もある。
歴史のストーリーとしても、金融のストーリーとしても十分に楽しむことのできる本書。
歴史や金融に興味がある人はぜひ手にとってもらいたい。
☆☆☆☆(☆四つ)
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