コンピュターの秘書になれる人間が高給取りになれる:大格差 [社会]
人間は機械に負けた。もはや人間の能力でコンピュータに勝つことは不可能だ。
経済学の教科書において比較優位の説明でよく引用される「アインシュタインと秘書」。これからまともに稼げる仕事につくことが出来るのは、コンピュータにとっての優秀な秘書となれる人間なのだ。
【目次】
第1部──超実力社会の到来
1章 iワールドの雇用と賃金
2章 大いなる勝者と大いなる敗者
3章 なぜ多くの人が職に就けないのか?
第2部──機械の知能
4章 コンピュータチェスが教えてくれること
5章 人間と機械がチームを組む未来
6章 人間の直感はなぜ当てにならないのか?
7章 規格化・単純化される仕事の世界
8章 機械は人間に近づくのか?
第3部──新しい世界
9章 雇用の新しい地図
10章 「オンライン」が教育を変える
11章 「みんなの科学」の終わり
12章 新しい社会的契約
解説──若田部昌澄
筆者はコンピュータ・チェスの例を出して、人間と機械が協働することの有意性を説いている。
コンピュータ・チェス(ちなみにコンピュータ将棋もほぼ同様の状況)の世界では、人間と機械が単独で戦った場合は、ほぼ100%機械が勝つ。人間は世界トップレベルが何回かに一度引き分けに持ち込めれば上出来というレベルだ。
では、チェスの世界において人間の価値が無くなったかというと、そういうことはない。
コンピュータ単独で戦うよりも、人間+コンピュータのタッグのほうが強いのだ。
人間が機会を使ってチェスを指して良いフリースタイルチェスの大会では、コンピュータの自動操縦では優勝できない。人間がコンピュータの良い所を適切に引き出す必要があるのだ。
(人間は複数のコンピュータが出す指し手を選択したり、適切な戦型を選択する部分を担う。)
さらにチェスの世界では、ここからが面白いのだが、コンピュータを使って勝つことの出来るプレイヤーはチェスの能力が一流とは限らないのだ。むしろ、チェスの一流プレイヤーの中にはコンピュータを信頼し切れずに自分の意見を多く入れてしまうことで、パフォーマンスを落としてしまう人もいる。
コンピュータ+人間のチェスで強いのは、コンピュータの方が優れていることを当然の前提として、ハメ手を回避したり、相手の使っているプログラムの弱点を探ったりする、高校スポーツにおける優秀なマネージャータイプの人間だ。
経済学者である筆者は、こうしたチェスの状況を踏まえ、近い将来にビジネスもこのような状況になってくることを予言している。
例えば、現在だとデータベースや職務経歴書を見ながらパフォーマンスを上げてくれそうな人を採用したり、昇格させたりする人事の仕事。将来的には、コンピュータが採用・昇格に値する人間を選別できるようになる。
そのような世界が来た時に、人事部員として高給を取ることが出来るのは、コンピュータに張り合って自分なりの考えを出す人ではなく、コンピュータがより正確な答えが出せるようにデータベースに入れる情報項目を整備したり、複数のコンピュータの答えを照合する仕組みを作ったりする人なのだ。
筆者はこれを機械とともに働くことの出来る15%が収入を増やし、機械とともに働くことのできない85%が収入を減らす未来として予測している。
人によっては悲惨な未来だと感じるかもしれないが、資産を持つ1%が高い収入を得る現在よりも、能力の有る15%が高い収入を得る(筆者の言う)未来のほうが美しいと感じる人も多いだろう。
特に日本では、後者のほうが良い社会だと評価されるような気がする。
筆者の未来がいつ現実になるかはともかく、将来の働き方の一形態として読んでおいて損のない一冊だ。
☆☆☆☆☆(☆5つ。満点)
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