ギャンブル依存症は”病気”である:ギャンブル依存国家・日本 パチンコからはじまる精神疾患 [社会]
ギャンブル依存国家・日本 パチンコからはじまる精神疾患 (光文社新書)
- 作者: 帚木 蓬生
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2014/12/11
- メディア: 新書
作家であり、精神科でも有る筆者がギャンブル依存症について語った一冊。
結論に全て賛成できるわけではないが、身近なところに落とし穴のあるギャンブル依存症という「病気」について理解できる良い内容だ。
【目次】
第1章 精神科医から見たギャンブル汚染列島
ギャンブル被害者の実態
第2章 ギャンブル汚染の実態と利権構造
ギャンブルが原因の犯罪
わが国のギャンブル汚染の実態
パチンコ・スロットの利権 ほか
第3章 日本はギャンブル汚染から脱却できるのか
ギャンブルによる脳の変化
わが国のギャンブル規制の歴史
諸外国におけるギャンブル規制 ほか
本書では第一にギャンブル依存症の定義から始まる。
ギャンブル依存症は個人の資質や、正確ではなく、病気であることがはっきりと分かる。
そして、基本的には不治の病であることもよく分かる。
現役の精神科医から、ギャンブル依存症は治らない。という衝撃的な事実が告げられた上で、本書はギャンブル依存症の実態に踏み込んでいく。
ギャンブル依存症になると、確実に生活に支障をきたすようになるし、横領・強盗などの犯罪に踏み込んでしまう確率も高い。統計が取られたわけではないが、筆者と同じ感想を友人の人事部員が語っていたので、ギャンブル依存と犯罪の関係は非常に強いと見て良いだろう。
では、何をきっかけにギャンブル依存症になっていくのか?
筆者は自らの治療経験から、パチンコが一番危ないと結論づけている。
筆者の経験上、いきなり違法なギャンブル(野球賭博や地下カジノ等)にハマる人は少なく、(逮捕される心配がないという意味で)合法的なパチンコや公営ギャンブルからギャンブル依存症になる人が多い。
そして、違法なギャンブルでなくとも、生活を破壊するのに十分な借金を作ることが出来てしまうのだ。
ここまでは、非常によく理解できる話で、会社生活などでも活用できる知恵である。
それらを踏まえた上で、筆者はパチンコを筆頭とした、ギャンブルの禁止を訴える。
筆者は、合法的なギャンブルが入口になっている現状から、ギャンブルを違法とすることで新たにギャンブル依存症になる人を減らすことは可能だと考えている。
この点だけは一概に賛成出来ない。
ギャンブルを違法化しても、証券市場や先物市場、FX等で実際のギャンブルを継続することは可能。
そう考えた時に、ギャンブルの違法化がどこまで効果があるのかは疑わしい。
また、ギャンブルを違法化してしまうと、現在パチンコに競争で負けている違法ギャンブルが復活してしまう可能性も大きい。
そうした側面を考えずに違法化を主張する筆者の見解はやや短絡的に見える。
おそらく医師として治療にあたっているとギャンブルそのものを根絶しないとキリがないという思いにとらわれてしまうのだとは思うが……。
このように筆者の意見には必ずしも賛成できないが、筆者の提示する事実は有用で役立つ事実である。
(少なくとも、本書を読めばギャンブル好きには近づかないようにしようと思える)
ギャンブルで痛い目を見る前に、見た後に手に取ると良い一冊だ。
☆☆☆★(☆3つ半)
他のBlogの反応はこちら
http://blog.livedoor.jp/tokyorio/archives/53096204.html
コメント 0