実現性の難しい奇策:ベーシック・インカム [経済]
山崎元氏のブログでその存在を知ったベーシック・インカム。それ以来興味を持っていたため、図書館でこの本を見つけて速攻でレンタルしました。山崎氏のブログで話題になったのは8月だったので、すごく時間が空いていますが・・・・
本書は論文形式ではなく、主に作者のヴェルナーのインタビューやスピーチを翻訳したものになっています。この形式は、論文のようにしっかりとした数字に基づく論説が無い変わりに、読むことは簡単なため一長一短。ベーシック・インカムのように書籍が珍しい分野に限ってはアリなのかもしれません。
ドイツにおける、ベーシック・インカムの議論の一部を垣間見ることの出来る書籍となっています。
ドイツにおける、ベーシック・インカムの議論の一部を垣間見ることの出来る書籍となっています。
ベーシック・インカムとは社会保障に関するすべての現金支給を、全国民に対して平等に与え、何もしなくても生きる権利を与えることで、生存権と労働を切り離す政策。
本書でベーシック・インカムに対する問題点として挙げられているのは主に2点。ひとつは財源の問題、もうひとつはベーシック・インカムを導入すると人が働かなくなるのではないかという問題。
これに対して筆者は歳入は消費税でまかなうとし、仮に50%程度の税率になったとしても他の税を廃止すれば物価は上昇しないと主張する。次に、労働意欲の欠如に対しては、ベーシック・インカムが導入されたとしても労働(ボランティア等を含む)をやめる人は少数であると主張する。
後者に対して、インタビュー以外の根拠は無いがドイツというイメージからはさもありなんという気もする(そしておそらく日本でも労働をやめる人は少数派だろう)。
これに対して筆者は歳入は消費税でまかなうとし、仮に50%程度の税率になったとしても他の税を廃止すれば物価は上昇しないと主張する。次に、労働意欲の欠如に対しては、ベーシック・インカムが導入されたとしても労働(ボランティア等を含む)をやめる人は少数であると主張する。
後者に対して、インタビュー以外の根拠は無いがドイツというイメージからはさもありなんという気もする(そしておそらく日本でも労働をやめる人は少数派だろう)。
私の気になっていた、ベーシック・インカムを導入することに伴う移民増があった場合どうするかとか、可処分所得が増大することによってインフレになるのではないかといった疑問はそもそも論点として上がっていない。
実際にベーシック・インカムが導入されると官僚・組合が大幅なリストラの対象となるため、私の生きているうちにベーシック・インカムが導入される国が出てくるとは思えない。しかし、このような一見突飛でいて、しかし、考えていくと現在の制度の問題点が浮き上がってくるような政策がわが国では絶対に議論されないであろうことを考えると、本書のように一定程度討議されているドイツを羨ましく思う。
☆☆☆(☆三つ)
ベーシックインカムは、社会主義やマルクス主義とは違うんですよね。
つまり、「働かなくても大丈夫」といった考え方はベーシックインカムと異なると思います。
働くことと資金を得ることがワンセットとなっていることに対して、働くことは働くこと、資金を得ることは資金を得ることとするのが大きな違いだと思います。
つまり、女性が家で家事をしているとします。
この家事労働は、賃金対象ではないですが、必須なわけですよね。
労働も、結局は給料の高さが、必須率ではなく、市場できまるわけです。では、必須は競争率が高く、価格が下がり、人気がなくなることが多々あり、必須が少なくなり、すると、ワーキングプアなわけです。
これが労働と給与がワンセットとなっている問題であり、これを解決するのがベーシックインカムです。
働かない権利を保障するのではなく、働かないことによって給与をきるという考え方を批評的に検証しているわけであって、全ての人間が働かないことを保障するわけではありません。
また、労働意欲の問題の解消となり、逆に生産力をあげると考えられております。
by きりはら (2008-03-06 22:08)
>きりはらさん
最初ベーシックインカム論に触れたときは働かなくても大丈夫と勘違いする人が居るのではないかと思っていました。
でも、この本や他のブログを見ていると、そういった心配は少なそうですね。
むしろきりはらさんの言うように生産力は全体として上がりそうな気もしています(実際はやってみないとわかりませんな・・・)
それにもまして、私がベーシックインカムがいいと思うのは、配分にかかるコストが少なくて済むことです。
介護保険や意味の分からない中小企業振興等の不公平もなくなり、官僚の不要に大きな権限も縮小できて一石二鳥だと思います。
今の新東京銀行の問題も意味不明な中小企業振興が裏目に出まくったのが問題のひとつですし。
by book-sk (2008-03-06 23:09)
管理人様のご意見に同感します。
配分にかかるコストの問題は、日本の税金問題の中心的問題とも思えます。
介護保険法、生活保護法、国民年金法、共済組合法、国民健康保険税いろいろ配分の仕方に、異様さを感じるのです。
国民健康保険にしても、3割負担と、納税額で、どちらが高いのかも理解しようがないですし・・・
by きりはら (2008-03-07 12:14)