人間描写は一流だが…:火のみち [小説]
この作品を読むと人間の内面は十分に描写されており、登場人物をリアルに感じることは出来る。しかし、そのほかに楽しみは無いのかと問いたくなる作品となってしまっている。
たとえば、作品を追求する陶芸家の物語なら幸田真音の藍色のベンチャー(上) の方が、目的に向けての努力とチームワークを堪能できるだけ楽しめると思う。
また、殺人犯の苦悩についても本書は主人公の性格が特殊なため、一般的なものとして受け止めにくい。
時代の描写についても、その時代を生きた人はキーワードで時代を思い出せるだろうが、私には「小野田さんが発見された」とか「石原裕次郎が亡くなった」とあるだけでは、その時代を思い出すことが出来ないので、時代を感じることは出来ない。余談になるが、amazonのレビューで高齢と思われる方の評価が高いのは時代をキーワードで思い出せるからであろう。
決してひどい出来ではないのだが、筆者の人間描写が好きで、ある程度昭和の時代を共有できる人なら楽しめるという、人を選ぶ作品になってしまっている。
☆☆(☆二つ)
余談:この作者の本を見るたびに思うのだが、第115回直木賞はやっぱり間違っていると思う・・・・
2008-02-08 23:16
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