軽すぎるエンターテイメント:県庁の星 [小説]
漫画化、映画化もされた県庁の星の原作小説。軽いストーリーで分量もさほど多くないため、簡単に読むことが出来た。内容も普通に面白いといった水準はクリアしているように思えるが、手放しではほめることの出来ない問題点もある。
ストーリーのあらすじは、ステレオタイプの県庁の役人がダメスーパーに派遣され、周囲と軋轢を生じながらもスーパーもよみがえり、役人も人間味を取り戻すといった単純明快なストーリー。ストーリーが単純なので、テレビドラマを見るように気軽に楽しむことの出来る小説となっている。
但し、簡単に読むことは出来る反面、問題点も多い。
まず、主人公である県庁の役人がワイドショーが取り上げるイメージそのままで、融通が利かない規則バカといった描写になっている。あえて狙ったキャラクターなら良いのだが、その他のキャラクターもその立場にありがちな「典型的」なキャラクターであるのは、読んでいてうんざりする。
また、スーパーが立ち直るに当たっての登場人物の行動も、これならスーパーの売り上げが上がるだろうと思わせる説得力が無いので、読者として納得できない思いを抱きながら読むことになる。
問題点をまとめて言うなら、主人公の役人よりも作者のほうが世間を知らないのではないかと思えてくるような底の浅さが残る作品といえる。
かんたんに楽しむことを目的とするなら悪いとまではいえないが、しっかり楽しむには物足りない部分の多い小説である。
☆☆(☆二つ)
役人が民間部門(第三セクター)を立ち直らせることを通じて成長するストーリーなら、この本よりも萩原浩「メリーゴーランド」の方がお勧めできる。
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